世界トップチームに所属する日本人アスリート
Yu Hanamoto
シンクロナイズドスケーター 花本 悠 (2015年5月1日記事)
▲2月28日と29日に行なわれた全カナダ選手権大会にて Ⓒ Sean Mckinnon
日本人選手のメダルや入賞が相次ぐ冬季オリンピックの花形競技フィギュアスケート。男女シングルをはじめ、男女ペア、アイスダンスと団体戦が、現在の冬季オリンピックのフィギュアスケートの正式種目。ここに、 2018年に韓国で開催される平昌(ピョンチョン)オリンピックで正式種目として加わると予想されている種目があるのをご存知だろうか? それが、 16人が1チームになり、ショートとフリーで得点を競うシンクロナイズドスケーティング。先月10日と11日には、世界シンクロナイズドスケーティング選手権大会 (World Synchronized Skating Championships 2015)がハミルトン市で行なわれ、トロント近郊バーリントンを拠点にしているチームNEXXICEが金メダルを獲得した。同世界選手権大会で優勝を果たしたカナダ代表チームには、日本人の花本悠さんが所属している。

「自分が本当にチャンピオンになったとは、未だに実感がない反面、目標としていたことがホームタウンのホームクラウドの中で達成できて本当に嬉しく思っています。今までサポートしてくれた家族、コーチ、マネージャー、チームメイト、友達、全ての関係者の方に感謝しています」と、喜びを語ってくれた花本さん。


彼女は7歳の時に、姉妹でスケートリンクに出掛けたのがきっかけで、シングルのフィギュアスケートを習い始めた。小学6年生の時に、「もっと本格的に学べるリンクへ移った方がいい」という勧めで、リンクを移る。そこで出会ったのがシンクロナイズドスケーティングだった。高校を卒業するまでは、シングルと並行してやっていたという彼女に、シンクロナイズドスケーティングの魅力について伺う。

「シングルとシンクロは、全く違うことが求められる競技。シングルでいくらうまいからといって、シンクロでも…ということはありません。チーム競技なので、自分がミスをしたら周りに影響するし、協調性が求められます。私自身も、最初は人と合わせるのがすごく難しかったです。その困難がある分、試合後の達成感は大きいですね。16人の息がぴったり合うことって奇跡ですよ。試合でうまく滑れた時の達成感というのは、私にとっては、依存してしまうほど、すごく強いものなんです。それで、また1年、また1年とこれまで続けきました。

世界ではまだ注目が低いシンクロナイズドスケーティングですが、知名度が上がれば必ず人気が出るスポーツだと思うので、多くの方に知ってもらえればと思っています」

日本でも、代表チームで活躍していた花本さんは、高校卒業後、日本で大学進学を考えていたが、留学経験のあるお姉さんから、「カナダに行ってNEXXICE に入れば?」という言葉を機に日本を発ち、当時憧れのチームであった名門チームへの入団を目指す。

▲2月28日と29日に行なわれた全カナダ選手権大会にて Ⓒ Sean Mckinnon

「日本でいろいろな大会に出場していた時から、常に首位を競っている NEXXICEには憧れていました。それは彼らがトップだからというのではなく、動きがきれいで無駄がなく、個人の技能レベルがすごく高い。ユーチューブなどで何度も見たりして、ファンという感じでした。当時、英語は全く話せなかったし、私があんな強いチームに入れるわけがないと思っていたのですが、姉の言葉で、”憧れのチームに入れたらすごいことだなぁ…“と妄想していたら、どんどん行きたくなって、カナダに行く準備を始めました」

トライアウトと呼ばれるチームのオーディションが行なわれるのは毎年3月。そこに照準を合わせて渡加し、トロントで4か月ほど語学学校で英語を学びながら自主練習を続け、 トライアルに挑んだ。

「その結果には、(一番レベルが高いカテゴリーである)シニアのチームには入れないけれど、オープンという趣味でやるチームなら入れる、ということが書かれていました。落ちたのか…と、落ち込んだのですが、しばらくしたらコーチが”夏の間だけシニアと一緒に練習に入ってもいいよ“とメールをくれたので、練習に参加しました。ところが、夏が終わっても、コーチから何も言われない。そこで、”私はシニアなのか、オープンなのか?“と聞いたところ、コーチが”それはあなた次第だ“と。私は当時、23番手の選手。16人で試合に出場しますが、20人までは選手リストに入れるんです。ところが20人以降だと、同じレッスン料を支払っているのに、衣装をもらえず、試合会場では更衣室にも入れない。コーチは補欠に入れなかった場合にも同じお金がかかることを考量して、”あなたが決めなさい“と言ったんです。日本からはるばるトロントにやって来て、チームにこんなにも近づいている状況。もちろんすぐに、”トライしたい“と即答しました」

▲1月30日、セント・キャサリンで開催されたアイスショーSkate Niagara Ice Showにて ⒸJim Coveart

そして昨シーズンは、晴れてシニアに選ばれ、彼女にとってのファーストシーズンとなった。今年に入ってからはフル出場を果たしている。そして先月の世界選手権では、家族が観覧席にいる会場で、自身が夢見た最高の成績を収めた。世界トップチームのNEXXICEについて日本のチームとの違いを問うと、「すべてが違う」と力を込める。

「まず、レギュラー争いが熾烈です。去年はそれについていけない弱い部分がありました。1つのスポットをシェアしてレギュラー争いを決める時は、必然的に火花が散りますが、日本人的な謙虚さが出たりする時があって…。あの人の方がチーム所属歴が長いし、うまいし…と思ったり。でも、それだとやっていけないということに気づいて、積極的にいくことにしています。それでも周りからは、謙虚に見えるらしく、”悠はやさしいね“と言われますけど…。スケートはタフなスポーツ。日本にいた時から精神的な強さでは自信があったのですが、こっちの人はもっと強い。自分は非常に甘かったと思うほどです」

シーズン中は、連日5時間ほど練習に集中しているという花本さん。高いモチベーションの維持のために常にしていることは、イメージトレーニングだ。

「試合でパーフェクトな演技をしている姿をイメージしています。大会でいい演技ができて優勝した時の気持ちや、キス&クライ(選手が得点待ちをする場所)で結果を聞き、喜んでいるところを想像したりしています」

▲4月にハミルトン市で行なわれた世界選手権にて Ⓒ Sean Mckinnon

今年一番の目標だった「ホームグラウンドでの優勝」を達成した花本さんに、今後の目標を伺った。

「シンクロナイズドスケーティングがオリンピックの競技として選ばれるかどうかが6月に正式発表されます。オリンピックとなると日本国籍を持つ私は日本での選手となるので、次のシーズンをカナダのチームで続けるか、日本のチームに戻るかはまだ今は決断を下せません。でもオリンピック入りを願い、新しい目標として更に頑張っていきたいと思っています」。


 
 


Biography

はなもと ゆう

東京都出身。1993年生まれ。7歳でスケートを始め、2008年から神宮シンクロナイズドスケーティングチームに所属。 10年、全日本シンクロナイズドスケーティング選手権大会優勝、世界選手権大会10位。11年、全日本選手権大会優勝、世界選手権大会12位。12年、全日本選手権大会優勝、世界選手権大会13位。13年、カナダに渡航。14年からNEXXICEに所属。 全カナダ選手権大会優勝、 世界選手権大会2位。15年、全カナダ選手権大会優勝、世界選手権大会優勝。

チームのオフィシャルサイト: nexxice.ca