リアルに描いた“坊さんワールド”
Yukinori Makabe
映画監督 真壁 幸紀(2016年4月15日記事)

笑えて泣けるそんな愛すべき作品を作りたい

住職という一般にはなじみの薄い世界をハートフルに描いたコメディ映画『ボクは坊さん。』が5月9日、日系文化会館で上映することが決まった。原作は、わずか24歳で祖父の後を継いで住職となった白川密成さんの連載エッセイを書籍化したもの。主演の伊藤淳史はじめ、山本美月、濱田岳、溝端淳平ら若手演技派の豪華キャストが揃った。今回の北米プレミアに先立って本作で長編映画初監督となる真壁幸紀監督にお話を伺う機会を得た。


©2015 "I AM A MONK" Film Partners

―どのような経緯で「ボクは坊さん。」がトロントで上映されることになったのですか?

「シカゴで開催される『Asian Pop-up Cinema』で本作を上映することになり、それにあわせて渡米することが決まりました。その流れで『じゃあ、トロントにも来て下さい』というお話を頂きました」

―本作は実話を元に作られたそうですね?

「はい、栄福寺のご住職、白川密成さんが書かれたエッセー本『ボクは坊さん。』を原作に映画化しています。プロデューサーに『これを映画化したいんだけど』と言って渡されたのがこの物語との出会いでした」

―もともと仏教や住職の世界に対する下地をお持ちだったのでしょうか?

「いえ、私自身、仏教に詳しかったわけではありません。むしろ、難しい教えなんかが詰まった本だったらと嫌だなぁ、なんて思っていました。でも読み始めてみたら、一人の若者の成長物語として、とても面白く書かれていた。これなら、堅苦しくない映画に出来るかもしれないと思いました」
 
—なるほど。海外はもちろんですが、日本でもあまり実情を知られていない「住職」という特殊な仕事や、独特の文化を理解してもらうために、なにか工夫はされましたか?
「映画の中で、お坊さんのお経や所作などにちょっとでも嘘があるとオーディエンスに伝わらなくなってしまいます。ですので、現役のご住職である原作者の白川密成さんに撮影現場で所作指導・監修をして頂きました」

—では現実をありのままに描いているのですね
「お坊さんの仕事のリアルを見てもらう事で、特殊な世界に対する理解のキッカケを作れればと思っています」

—ずばり、本作の見どころを教えてください
「一番の見どころは伊藤淳史さん、イッセー尾形さんをはじめとする、役者の皆さんの素晴らしいお芝居です。観ていただいた後、気持ちが楽になったり、生きていく上でのヒントだったりを持って帰って頂けたら嬉しいです」


©2015 "I AM A MONK" Film Partners

—真壁監督は本作が長編監督デビューということですが、これまでに『踊る大捜査線』や『ALWAYS三丁目の夕日 '64』などの大ヒット作で助監督を務めていらっしゃいます。その経験はどのように生かされているのでしょうか?

「第一線のスタッフ・キャストの方々の仕事っぷりを間近で見て、それを肌で感じ、妥協をしない物作りの姿勢を叩きこまれました。その事は、監督をするうえで血となり肉となっていると感じています」

—真壁監督が映画監督をめざそうと思ったきっかけを教えてください
「高校時代に自主映画を作って上映したら、見てくれた人が笑ってくれたんです。映画作りも楽しかった。それがきっかけです」

—どんな作品だったのですか?
「男子校だったので、同級生を集めて学園ものの友情を描いた20分くらいの作品を作りました。といっても、ストーリーらしいストーリーはなくて、遊びで撮ったようなものでしたが」

—当時の観客の反応は?
「作り手も観客も友達ばかりだったので、同級生が演技をしていること自体が可笑しくてウケていたようなものでしたね。ただ、遊びから始まったものの、この体験で映像を作って見せる醍醐味を味わってしまったのは間違いありません。私は、見てくれる人が喜んでくれる映画を作る事はもちろんですが、『自分も映画制作を楽しむ』という事もずっと目標として掲げています」

—尊敬する映画監督を教えてください
「ビリー・ワイルダー監督とキャメロン・クロウ監督です。ユーモアのあるストーリー、そして登場人物を愛せる作品という点で大好きですね」

—ご自身はこれからどんな作品を作ってみたいですか?
「題材は未定ですが、脚本を兼任したオリジナル作品を撮りたいと思います。やはり笑えて、泣ける作品を目指します。そのためにも、フットワークを軽くして、舞台や映画、コンサート、それに飲み会にもどんどん足を運ぶようにしています」

—座右の銘を教えてください

「全てのチャンスボールにフルスウィング!」

—最後に、映画上映を楽しみにしているbits読者へメッセージをお願いします
「仏教を題材にした映画と聞くと、堅苦しいイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、誰が見ても楽しんで頂ける映画を作ったつもりです。是非、肩の力を抜いて、リラックスして映画を見て頂ければと思います。私も上映会場で皆さんにお会いできるのを楽しみにしています!」。 




「ボクは坊さん。」上映スケジュール
日 時:5月9日(木)19時~
場 所:日系文化会館(6 Garamond Crt.)
入場料:一般$10、JCCC会員$8
サイト:www.jccc.on.ca

 
 


Biography

まかべ ゆきのり

1984年、東京都出身。大学卒業後、制作会社ロボットに入社。CM制作部を経て、映画の演出部へ。『踊る大捜査線』シリーズで本広克行監督に、『ALWAYS三丁目の夕日’64』で山崎貴監督にに助手として師事した後、監督デビュー。12年、ショートフィルム『THE SUN AND THE MOON』が「Journey Awards」審査員ブランプリを受賞。ショートフィルムはじめ、TVドラマや舞台も手がける。本作は長編映画の初監督作品。