オンタリオ・サイエンスセンターにて
「SULTAN OF SCIENCE」展開催中!


現在、オンタリオ・サイエンスセンターでは野心旺盛な多分野の学者たちが織り成すイスラム科学の黄金期に焦点を当てた、見て、触れて、遊んで、学べる特別展覧会「SULTAN OF SCIENCE」を開催中。この展覧会は、世界初のカメラにコンピュータ、人類最初の飛行者など、驚くべき中世イスラム世界の技術と発明を再発見する旅に出かけよう!というのがコンセプト。


ここで少しイスラム黄金時代について調べてみました。


「8世紀から16世紀イスラム世界において、哲学、科学、医学、建築など多岐にわたる分野で多くの学者、発明家たちが活躍した時代がイスラム黄金時代。8世紀中期に成立したアッバース朝時代の「学者のインクは殉教者の血よりも尊い」といった、有名な言葉からも分かるとおり、学問に対する姿勢は当時、全世界の知識の集積所となるほどのものであった。当時は、ムスリム学者だろうが非ムスリム学者だろうがためになる情報や知識は全てアラビア語、ペルシア語などに翻訳し、古代ローマ、中国、インド、ペルシア、エジプト、ギリシャ、東ローマ帝国から得た知識を集積した偉大な文明国として黄金期を築いていた」どうでしょう?こんなにものすごい黄金期があった中世イスラムの世界、早速潜入してみましょう。


サイエンスセンターレベル6の地下に降りていってスペシャルエキシビションホールの前まで行くと、当時の船乗りたちと現代人がお出迎え。

歴史の教科書でもおなじみの14世紀初頭の旅行家イブン・バトゥータやキリンなどの珍獣を明代の中国へ持ち帰った鄭和たちの大航海はヨーロッパで大航海が始まる1世紀も前のことでした。


ゲートをくぐって中に入るとすぐ横におかしな形の手すりが…。これは一体なんでしょう。


手すりの間に立つと下に見えるのは昔のイスラム世界らしき風景画。まるで上空から見下ろしたような雰囲気です。


なるほど、この手すりに合わせて手を動かして下を見ればレオナルド・ダ・ビンチよりも先に空中飛行を試みた9世紀の天才アッバース・イブン・フィルナスの気分になれるかも?


赤い部分が黄金時代のイスラム世界拡大の様子を表したものです。こんなに広大な地域でイスラム世界が栄えていたなんて想像以上でした。


空中飛行とイスラム世界の大きさに驚かされて次へ向かうとそこには、色んなからくりの模型が。この仕組みは簡単なように見えますが、実は現代においても重要な仕組みの元となっているものなんです。発明家アル=ジャザリは、およそ50個以上もの発明をしたといわれていますが、最も力を入れたのが水をくみ上げる揚水機です。皆さんご存知の通り、イスラム世界は砂漠が多い!そこで、緑豊かな地を作ろうと画策した結果、当時の世界では最先端のダム、水路といったシステムが完成したのです。彼の作った水道は、市内の病院やモスクに給水し続けたそうです。

また、治水システムだけでなく、現在の自動車のエンジンの原点ともいえるクランクシャフトも発明しているんです。彼がいなかったら自動車の発明は遅れていたかも…?



この立派な象の模型、ただの飾りかと思いきやまたもやアル=ジャザリの発明の一つなんです。これは、「像の水時計」といって、水時計の仕組みを利用してシンバルがなったり、鳥がさえずったりして時を知らせるといった彼の記念碑的な作品です。芸術とからくりが融合した珍しい発明品ではないでしょうか。

ちなみに、アル=ジャザリの天文時計は、一日ずつ正確に調整できたことから世界初のプログラミング可能なコンピュータと言われているんです。アル=ジャザリ、凄すぎます!



さて、次はイスラム世界の医学コーナー。あまり知られていないと思いますが、イスラム医学は当時のヨーロッパ医学よりもはるかに進歩していたのです。



近代外科学の父として名高いアブ・アル=カシムは、30巻もの医学事典を書き上げ、17世紀までイスラムとヨーロッパのスタンダードとしてあり続けたらしいです。この医療器具たち、現代の医療器具とあんまり変わらないように見えますね。彼の医術は、数多くの手術用具を用いた事が特徴。当時から注射もあったなんて凄いですが、今と違ってとても痛そうです…。


眼科のゾーン。現代の眼科学に大きく貢献したといわれるイブン・アル=ハイサムという方が、カメラの元となったカメラ・オブスクラを発明したといわれています。また、目の構造についても先人の考えとは、反対の立場に立ち、物から発する光で目は物が見え、脳と目の関係性についても言及したことで知られています。今から1000年以上も前に目の構造を解き明かした人がいるなんて凄いですね。


医学ブースの隅には、大きなタッチパネルがあって触ると細かく説明してくれます。


面白い!これだと楽しく学べそうです。


循環器の基礎を論じ、循環理論の父と呼ばれるようになったイブン・アル=ナフィスは、人体およびその保全は血液のみによることを発見したそうです。画面を触ると当時の背景と一緒に音声付で映像が流れます。当時の学者たちの苦労や努力が分かりました!


754年のバグダードでは、世界最初の薬局が出来たそうです。


天文学の分野でも大活躍だったイスラム天文学者。
彼は一体何を覗いているのでしょう?


天体球。星の名前や正座の名前には、アラビア語が多いですが、イスラム教である彼らにとってメッカの方角はとっても重要。しかも、目印の何もない砂漠だと方角って確かに分かりづらいですよね。そんな経緯でイスラム世界で天文学は発展したそうです。


お次は、数学。


皆さんが今普通に使っている、1、2、3、4などの数字、アラビア数字って言いますよね。この数字のおかげで計算が簡単になりました。足し算するだけでもアラビア数字と他の種類の数字じゃ全然違いますね。



数学コーナーと合わせておいてあるホワイトボードでは、幾何学で模様作りが体験できます。隣の人は雪の結晶のようなものを完成させていました。

さて、今回見て、触れて、体験しながら、イスラム黄金期のたくさんの発明品について学びましたが、「イスラム世界の人々、昔の人たちって凄かったんだなー」と、感慨深くなりながら、サイエンスセンターを後にしました。イスラム黄金期、と一言に言っても、今日、我々が生きていくうえで欠かせないものとたくさんの繋がりがあるという事に本当に感動した一日でした。


メディアプレビューの場でオンタリオサイエンスセンターの最高経営責任者であるレスリー・ルイスさんは、次のように語ってくれました。「今回のイスラム黄金期の膨大な知識の展示は、多種多様化する社会で暮らす我々とってとても重要である。きっと訪問客の方々には、イスラム黄金期の科学が偉大な科学の大発見を成し遂げたことに気づいてもらえるでしょう。歴史的な背景に関係なく今回の展示は、若者や学生たちのモチベーションを上げることは間違いないと思います」

楽しく歴史を知り、先人たちの偉大さに気づかせてくれる「SULTAN OF SCIENCE」は、期間限定でオンタリオサイエンスセンターにて開催中。是非、この機会に世界で頂点を極めたイスラムの黄金時代を体験しませんか?

〈記事:原 友希恵〉

Information


【期 間】3月7日(金)~6月7日(土)
【場 所】Ontario Science Centre(770 Don Mills Rd)
【入場料】大人$22
     シニア(65歳~)/学生(13歳~)$16
     子ども(3~12歳)$13
     ※学生はIDが必要。
【連絡先】416-696-1000
【サイト】www.ontariosciencecentre.ca