密林に覆われた遺跡が現代に伝える
失われた古代文明の力強い息吹
MAYA Secrets of their Ancient World
(2011年1月20日記事)

100 Queen's Park, Toronto

Vista of the Palace Archaeological Site of Palenque, Chiapas, Mexico. Late Classic Period 600-900 CE. Photo © Justin Jennings, 2011

メキシコはユカタン半島から、現在のグアテマラ、ベリーズにまたがる中央アメリカ地域を中心に紀元前3世紀から16世紀頃まで栄えたマヤ文明。遺跡は数多く残されているもののその全貌にはまだまだ不明な点も多く、それが魅力の1つでもあるマヤ文明。それが多くの人々の好奇心と知識欲を刺激し続けている理由だ。

神秘の古代文明

マヤ文明は、長きにわたって外部の影響や干渉を受けることなく発展を続け、高度な都市文明を築いた。古代マヤ人は車や牛馬を使わず、鉄器も使用せずに人力と石器だけで石造りの巨大な神殿やピラミッドをいくつも建造。舗装した道路で都市と都市を結んで盛んに交易をし、独特の文化と学芸を発展させた。特に、肉眼では見ることができない海王星の存在を知り、火星や 金星の軌道さえ計算できるほど精緻な天文学や暦学、数学の知識を持っており、後世の学者たちがマヤ人は宇宙人なのではと疑ったほど。一体彼らは、どんな思想のもとに生活を送っていたのだろう。

MAYAAll images: © CONACULTA-INAH, Jorge Vertiz, Reproduction authorized by the National Institute of Anthropology and History (INAH), unless otherwise specified

たとえば映画『2012』などでも取り上げられ、人々を不安にさせている2012年人類滅亡説。学者たちを驚かせたマヤ暦の1つ「長期暦」には、「マヤの大周期」と呼ばれる約5125年の枠組みがあり、それが2012年12月21日に区切りを迎えることから連想された終末論の1つだ。世界各地で大災害が起こり人類最後の日が来るのではとおびえるよりは、この区切りを境に次の長期暦が始まると考え、これに合わせて人々が何らかの意識改革をするという説を信じたいところ。だが本来注目すべきは、マヤ暦における「歴史は繰り返す」という概念だ。周期的な法則から暦を作り出したことで、さまざまな物事に周期を見出だしていたのではないかともいわれている。また、独特の宗教観がよくわかるマヤ神話は、神々による世界の創世、人間の創造と、双子の神の奇想天外な冒険譚などが興味深い。そこには方角や色、数字、暦、働くことや食物の収穫についての重要性が示され、教育的要素も読み取れる。スペインによる侵略の際に消失したものも多く断片的だが、十二分に楽しむ余地がある。

ROMの特別展

今回のマヤ特別展は、ROM、カナダ文明博物館とメキシコ国立人類学歴史学研究所の協力により実現した。巨大彫刻や仮面、宝石など約250点にものぼる展示品はどれも、マヤの秘め られた文明を伝える貴重な品々だ。彼らが培った美しくも奇怪なマヤ文字、特徴とされる生贄の儀式や死生観にも触れることができる。

MAYA ROM exhibition curator Dr. Justin Jennings and ROM crew ascending the steps from Pakal’s tomb, located in themiddle of the Temple of the Inscriptions at Palenque.
© Royal Ontario Museum, 2011
MAYA ROM exhibition curator Dr. Justin Jennings and ROM crew filming on location in the pyramid of the Temple of theInscriptions at Palenque.
© Royal Ontario Museum, 2011

文明そのものにも謎が多いが、最大の謎は彼らが「どこから来たのか」とうこと。マヤ文明の前身は中米最古の文明といわれるオルメカ文明とされているが、その説をひっくり返す遺跡も発見されており、マヤ人の出自は闇の中。どこからともなく現れ、なぜか山奥に住みついて高度な文明生活を送った彼らの最盛期は8世紀頃。以降は連鎖的に衰退し、17世紀に、最後の自立都市がスペイン領に併合され滅亡した。だが、その末裔たちは今も独自の文化を守りながらかの地で生活している。
文明は消えても心は受け継がれていくことが実感できる特別展は、4月9日まで開催中。昨年10月末より料金が改定され、ぐっと利用しやすくなったROM。古代マヤ人たちが残した品々から、彼らの栄枯盛衰に想いを馳せよう。




Incense burner stand depicting theJaguar God of the Underworld

この香立ては縦に3 つの彫像があり、上からジャガー神に扮した支配者、同様の装束を身につけヘビの頭から生えるように表された特権階級者、そしてジャガーの頭部となっている。当時、ジャガーは地上界最強の生物として崇められ、太陽神キニチ・アハウの夜の姿でもあり、ジャガーと人間が合体した像は支配者階級の権力を誇示するために用いられた。

Ceramic; Late Classic Period (600-900 CE)Comitán, Chiapas, Mexico Museo Regional de Chiapas, Mexico




Lid of jar with monkey and cacao pods

中米ベリーズはアルトゥンハ遺跡で出土した耳飾り。火山岩の一種である黒曜石で作られており、火山のないベリーズで発見されたことで、当時すでにグアテマラなどと交易があったことが判明した。彫刻からは人の名前と称号が読みとれる。墓所から発見されたもの。埋葬時よりも1 世紀以上も古い彫刻の様式であることから、その家に伝わる家宝と考えられている。

Obsidian and cinnabar; Early Classic Period (250–600 CE) Altun Ha, Belize Royal Ontario Museum, on loan from the Government of Belize Photo © Royal Ontario Museum




Lid of jar with monkey and cacao pods

カカオを好むクモザルがココアの壷の首輪をしているという、一風変わったデザインのフタ。古代マヤ人たちはカカオの実をあぶってから発酵させてカカオドリンクを作り、これを神への供物、あるいは特権階級だけが口にできるものとしていた。サルがカカオを守るようなそのデザインから、当時カカオの実は栽培が困難だったため、需要の高い交易品だったことが伺える

Ceramic; Toniná, Chiapas, Mexico, Late Classic Period (600-900 CE) Museo de Sitio Toniná, Mexico




Pedestal jar depicting a combination of the gods K'awiil and Chaahk

ラマナイ遺跡にある墓所の1 つに寄り添うように作られたくぼ地から出土した壷。1974 年のROM による発掘調査で発見された。彫像はマヤ神話における2 つの神を合わせて模しており、そのうちの1 つであるチャクは雨と雷の神。水瓶を傾けて雨を降らせ、斧をふるって雷を起こすことができるという。農耕社会のマヤにおいて強く信仰されていた。

Ceramic; Early Post-Classic Period (900-1250 CE) Lamanai, Belize Royal Ontario Museum, on loan from the Government of Belize Photo © Royal Ontario Museum




Funerary mask

このヒスイによるモザイクのマスクは故人をかたどっているとともに、『若きトウモロコシの神』を呼び起こすものとされている。マヤ神話によれば人間は「トウモロコシの粉と蛇の血をこねて創られた」とされており、『若きトウモロコシの神』は生命に息吹を与え、大地を実らせ、富と豊穣を生む神として崇められている。

Jade, shell, and obsidian; Early Classic Period (250–600 CE) Calakmul, Campeche, Mexico Museo Arqueológico de Campeche Fuerte de San Miguel, Mexico




Event


Reconsidering Ideas about Early Maya Political Organization

カーカビシュ遺跡の本格的な発掘を主導したトレント大学ヘレン・ヘインズ教授による講演。マヤの政治構造など、新しい発見が相次いでいる。

  • 【日 時】 1月31 日(火)19 時~ 20 時
  • 【参加費】 一般$23、会員$21


Palenque: The Art and History of an Ancient Maya Royal Court

古代都市パレンケには多くの神殿や彫像が残され、1987 年に世界遺産として登録された。18 世紀の遺跡発見以降、研究者たちが残した資料を読み解く。

  • 【日 時】 2 月28 日(火) 19 時~ 20 時
  • 【参加費】 一般$23、会員$21


The End of Time:The Maya Mystery of 2012

2012年人類滅亡説を通じて有名になったマヤ暦を踏まえ、数多の文化における「終末観」を考える。現代人が「終末観」に魅力を感じる理由についても講演。

  • 【日 時】 3月19日(月)、20日(火)19時~20時
  • 【参加費】 一般$23、会員$21



Information
Maya: Secrets of their Ancient World
  • 【日 時】 開催中~ 4 月9 日(月)
  • 【場 所】ROM(100 Queen's Park)内、Garfi eld Weston Exhibition Hall 地下2階
  • 【入場料】
    大人.....................................................通常$25 金曜$19
    子ども(4~14歳以上)..............................通常$17 金曜$11
    シニア(65歳以上)・学生(15~25歳以上)....通常$22.50 金曜$17
  • 【連絡先】416-586-8000
  • 【サイト】www.rom.on.ca
※金曜日の割引価格は16時30分~20時30分までの入場者に適応
※サイトからも購入可能。その際には2ドルのサービス料が追加されます。
※学生はIDが必要  *3歳以下は入場無料

 
 
【場所】ROM(100 Queen's Park)内、Garfi eld Weston Exhibition Hall 地下2階