個性豊かなフランダースの名都
Antwerp, Belgium
アントワープ(ベルギー王国)(2012年11月16日記事)

Antwerp, Belgium

©Antwerpen Toerisme & Congres/ www.visitflanders.jp

古くから貿易の盛んなヨーロッパにおける2番目に大きな港として、「フランダースの犬」のネロ少年が憧れたルーベンスの祭壇画の町として、そして世界のダイヤモンド取引の中心地として、その名を耳にするアントワープ。近年では「アントワープの6人」と呼ばれるデザイナー達を輩出した王立芸術アカデミーファッション科が注目を浴びている。パリやアムステルダムから国際特急列車で2時間、近隣の国から気軽な日帰り旅行もできる魅力的な町だ。

町歩きで歴史をひも解く

町歩きを始める前に、動物好きなら中央駅のすぐ近くのアントワープ動物園を訪れてみよう。1843年創設のこの動物園は、オカピやボノボなど絶滅危惧種の保護に力を入れており、1000種近くもの動物がいる。19世紀に建てられたエジプト式神殿やムーア式神殿などの古い建築と動物達の組合せが、不思議とフォトジェニックな雰囲気を醸し出すが、時間がなければ、ライオンの壁画がある美しい入口だけでも一見の価値があるだろう。
さて、町の中心グロートマルクト広場に出てみよう。広場にある市庁舎前の噴水に立つブラボーの像こそ、アントワープ創世伝説の立役者だ。町を流れるスヘルデ川岸に住んでいたという巨人、アンティゴーン。彼の横暴を見かねたローマ兵シルビウス・ブラボーが、巨人の手を切り落として川に投げ込んだという伝説から、フラマン語で「手を投げる」という意味のアントワープという名前がつけられたのだ。
そして、ここに来たからには、やはりノートルダム大聖堂でルーベンスの一連の祭壇画を見たい。この宗教画の傑作が登場する児童文学「フランダースの犬」は日本では何度もTVアニメで放映されて有名になったが、実はベルギーでは無名の作品だった。ところが日本人がひっきりなしに訪れたせいで、今や大聖堂の前に記念碑が建てられたのだから、アニメの影響力はすごい。岩をも動かすかどうかはわからないが、少なくとも大聖堂前の石畳は動かしたのだから…。祭壇画の前に立ってネロ少年がキリストの絵を一目見る場面を思い出すと、やはりジーンと来るものがある。アントワープとの心の距離が一気に縮まる瞬間でもある。また、大聖堂の北側にある天空に付き出した高さ123メートルの塔も必見だ。金色の時計が美しいこの塔はユネスコ世界遺産の「ベルギーとフランスの鐘楼群」のひとつ。スヘルデ川を背景に町を見下ろすように伸びる塔楼は、象徴的な存在だ。

ビール?それともチョコレート?

ベルギーといえばビールの国。アントワープの地ビールでもっとも有名なのはデ・コーニンクだろう。世界的に知られるようになってからも昔と変わることなく、町に唯一残るビール醸造所で製造されている。ボレケと呼ばれる独特の形をしたグラスで飲むことから、デ・コーニンクを飲む時は「ボレケ一杯」と注文するのがアントワープ流。
そしてもうひとつの「ベルギーといえば…」はチョコレート。小さな店からシャンデリア煌く高級店まで多くのショコラティエがある。店のショウウィンドーには様々な形や色のチョコレートが所狭しと並び、甘い香りに包まれながら思わずうっとり見入ってしまう。ふと、どの店でも手の形をしたチョコレートがあるのに気がついた。そういえば、デ・コーニンクのラベルにも同じような手が描かれている。そう、これこそ英雄ブラボーが切り落とした「アントワープ・ハンズ」なのだ。ちょっと残酷な気もするが、アントワープならではのモチーフには違いない。バーのカウンターでゆったりとビールを飲む人、真剣な表情でチョコレートを選ぶ人。世界を動かすダイヤモンドマーケットやモードの町も、素顔は花より団子のようだ。

More Info
● ベルギー・フランダース政府観光局(日本語)
www.visitflanders.jp



 
 

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