セーヌ川に浮かぶペニッシュの町
Conflans-Sainte-Honorine, France
コンフラン=サントノリーヌ(フランス共和国)(2012年10月19日記事)

Conflans-Sainte-Honorine, France

コンフラン・サントノリーヌはパリのサンラザール駅から北西に25キロの小さな町。ベルギーから流れ込むオワーズ川とセーヌ川との合流地点(conflation)であることと、この町の守護聖人オノリーヌから名付けられた。セーヌ川といえばパリのポンヌフ橋やポンデザール橋など歴史ある橋梁の下を流れる姿や、ロマンティックな河岸が思い浮かぶかもしれないが、実際はフランスを777キロにわたって流れているだけあり、土地ごとに様々な表情を見せてくれる。コンフラン・サントノリーヌで出会えるのは、自然に囲まれながら人々の生活の生活を支える、素顔のセーヌ川というべき一面だ。

希少な教会船を訪れる

河港が現れるのと同時に目に入ってくるのが、水辺に停留するカラフルな船の数々。ペニッシュと呼ばれるこれらの平底船は本来河川や運河の貨物運搬用なのだが、ここでは専ら住居として活躍している。船内にはキッチンやダイニングルーム、シャワー室があり、設備は町中のアパルトマンと変わりなさそうだ。ペニッシュが川に浮かぶ姿は実に絵になるもので、持ち主達もそれを心得ているのであろう、一国一城の主といった満足気な笑みを浮かべてこちらを眺めている。水上生活は想像以上に快適なのかも知れない。
さて、そんなペニッシュの一群の中に「JE SERS(私は奉仕する)」と書かれた一艘の白い船を見つけた。これが、フランスに6艘存在するという教会船のひとつだ。1919年に石炭を運ぶ貨物船として造られたこの船は、1936年に教会船に生まれ変わり今に至る。外から見る限りでは、船体の十字架モチーフや入口の聖母マリア像にそれらしさが感じられるものの、教会というよりはやはり船舶。一体この中はどうなっているのだろう? と舷梯を渡ってデッキに移り、小さな扉を開いてみる。すると―そこは紛れもなく教会なのだ。ステンドグラスの波模様や壁にかけられた浮き輪が個性を強調する中、宗教画が描かれた祭壇が目に入る。図書コーナーでは子ども達が静かに本を読み、礼拝堂の横ではピアノの練習が行なわれている。食事の無料配給や献血活動など社会奉仕活動に力を入れるこの教会船は、地元の人々の憩いの場でもあるようだ。訪問時はちょうど結婚式が行なわれるところで、甲板では子ども達がおめかしして嬉しそうに駆け回っていた。ほどなくして登場した新郎新婦もこの町で育ち、この教会船に通っていたのだろうか。白鳥がセーヌ川をゆったりと泳ぐ晴天の午後にぴったりの、幸せそうな光景だった。
ここまで足を伸ばしたら、近くに停留する文化財指定のジャック号も見逃せない。齢100歳を超える堂々とした黒い船体に赤と白のペイントが美しく、さながら生涯現役の伊達親父というところか。町の中心にはジャック号を所有する川船博物館がある。川船運搬に関してはフランス一の収蔵数を誇る博物館で、川船とその歴史を学ぶのも面白そうだ。

川の流れのように…

コンフラン・サントノリーヌのランドマークは、ロマネスク様式のモン・ジョワ塔とオノリン聖人の聖遺物を祀るサン・マクルー教会。ともに11世紀から建立が始まっており、中世の空気を色濃く漂わせている。この町がいにしえの美しさを留めていられるのも、このふたつの建物の存在が大きいだろう。
白い壁に赤い屋根の家が続く小路を抜け、展望台に登って辺りを見下ろすと、緑に囲まれて蛇行するセーヌ川のパノラマが眼下に広がる。教会船もジャック号も、長い間あちこちの河港で働いた後、はるかなる水路を渡ってコンフラン・サントノリーヌにたどり着いた。穏やかなこの場所が、彼らの終の棲家となることを祈りたい。

More Info
● コンフラン=サントノリーヌ観光局
www.conflans-tourisme.com



 
 

Conflans-Sainte-Honorine, France