星降る秋の国立公園
Jasper, Alberta
ジャスパー(アルバータ)(2013年9月6日記事)

Jasper, Alberta

カナダにいるなら一度は訪れてみたい、雄大な山脈地帯カナディアン・ロッキー。その中には4つの国立公園があり、敷地面積1万878平方キロのジャスパー国立公園はカナディアンロッキー最大の国立公園。夏のハイシーズンやウインタースポーツシーズンの狭間であるこの季節のジャスパーでは、一味違ったイベントが開催される。山、湖、氷河、鍾乳洞、そして天に広がる星空と、様々な要素に恵まれた自然の懐に飛び込んでみよう。




世界で一番暗い夜

トロントからジャスパーに行く時の中継地点は、アルバータ州の州都エドモントン。そこから西に向かって車でおよそ3時間、ジャスパー国立公園の入口が見えてくる。公園のゲートをくぐってしばらく走り続けると、動物達がジャスパーへようこそ! とばかりに現れた。さっそく遭遇したのは、こちらの都合などお構いなしに高速道路 をのっそりのっそり横切るビッグホーン・シープの群れ。カナダでは各州を象徴する植物や動物が決められていて、彼らはアルバータ州のシンボル。人間とほとんど同じ大きさで、オスは時に頭に14キログラムにもなる巻いた角を乗せている。おつかれ様です、とつい言いたくなる立派さなのだ。それより大きな体のヘラジカ達も悠々とこちらを眺めている。ひょっとするとクマと遭遇するかもしれない。そんな中を通りすぎて到着した国立公園内のダウンタウンは、素朴で静かな佇まい。人間同士の間でも譲り合い運転の習慣が行き届いているのは、動物たちが教えてくれた賜物だろう。自然と生き物と機械は調和できる―それを体現しているのがジャスパーだ。カナダで最も長いロープウェイでウィスラー山に登れば、カナディアンロッキー最高峰のロブソン山がそびえる絶景が広がっている(2013年は10月14日まで運行)。
そして日没後の国立公園は、日中とはまた異なる顔を持つ。2011年にカナダ王立天文協会から「ダーク・スカイ保護区」に指定されたジャスパーは、世界中にある"暗い空"の中でも最大規模かつ最も闇が深い。暗いといっても星が見えないわけではなく、人工的な照明の影響を受けていないということ。暗闇が暗闇であることを保護された、理想的な天文観測地なのだ。
夜の空が主役になる季節は秋で、今年も10月25〜27日に満天の星々を鑑賞する一大イベント「ジャスパー・ダーク・スカイ・フェスティバル」が開催される。本格的な天文ファンから家族連れまで集う暗い大空の下には、昼間出会った動物たちも潜んでいるはず。案外すぐ近くで一緒に星を見上げているかもしれない。 


伝説の島スピリットアイランド

カナディアンロッキー広しといえど「もっともカナディアンロッキーらしい景色」はどこにあるのだろう? 答えはジャスパー国立公園の中、 マリーンレイクと湖に浮かぶ小島スピリットアイランドの見える場所がそこ。鏡のように碧く澄み切った湖の周りをロッキー山脈が囲む様は、ピクチャレスク(絵のように美しい、といった意)と はこの事かと息を呑んでしまうほどの完成形。日本のコマーシャルにも登場したことがあるので、この景色を見てデジャヴュを覚える人もいるはずだ。先住民族の伝説では、ある部族の酋長の娘が敵対する部族の若者と恋に落ちスピリットアイランドで密かに逢瀬を重ねていたが、それを知った酋長が2人の仲を引き裂き、若者は娘を待ち続けながらこの島で亡くなった。彼の魂は今も島にとどまっているという。そんな話を聞くと、この眺めも美しいばかりでなくしっとりした湿度や植物のにおいが感じられて、ぐんと生身のものとして迫ってくる。

ジャスパーからさらに西へと旅を続けるなら、寝台列車カナディアン号に乗ってバンクーバー行き1泊2日の道中へ…ロッキー山脈横断の醍醐味はまだまだ続くが、それはまたいつかの機会に。



〈文、写真/金沢 知子〉
〈photo/© Jasper by Uli Harder〉




More Info

● カナダ観光局公式ウェブサイト(日本語)
jp-keepexploring.canada.travel
●ジャスパー観光ウェブサイト
www.jasper.travel