古代ローマ人も入浴した温泉郷
Bath, England
バース、イングランド(2015年3月20日記事)

Bath, England

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「イングランドの中心」と呼ばれるコッツウォルズ丘陵の下方にあり、果てしなく広がる緑地とエイボン川に抱かれたバース。紀元前に温泉で病を治した王様が作ったという、温泉ありきの町だ。古代ローマ人達はかつてここにテルマエ・ロマエ(ローマ風呂)と神殿を建設し、理想の温泉郷を作り上げた。21世紀の今も新たな総合スパがオープンして、遠方から多くの人が名湯に浸かりにやって来る。そんな湯の町の歴史に思いを馳せれば、ジョージアン様式の壮麗な町並みにぐっと親近感が湧いてくるだろう。

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古代の女神に捧げられた温泉保養地

ロンドンのパディントン駅から鉄道で1時間半。バースは首都から日帰りできる距離にあり、ロンドンに次いで観光客が訪れる町。それは地の利のよさもさることながら、その名のとおり”お風呂の町“というユニークさが人を引きつけて止まない理由のひとつ。今も一日120リットルの湯が湧くバースの温泉は、入浴好きな古代ローマ人を虜にして壮麗な温泉保養地を作らせてしまったのだから、その効力は抜群だったのだろう。

伝説によるとバースが温泉町として誕生したのは、紀元前863年。難病を患ったケルト系ブリトン人のブラドッド王がバース近郊で豚が温かい泥水に入っているのに気づき、自分も泥水に浸かったところ病気が治ったことから、女神スリスに捧げる廟を建設したのが始まり。その後紀元1世紀にローマ人がここをアクアエ・スリス(スリス女神の泉)と名づけて大浴場や神殿を作り、温泉都市を築き上げた。

ローマ浴場跡博物館では、湯気を立てる緑色の湯が張られた大浴場を始め、古代建築群が良好な状態のまま保存されている。また18世紀にはイギリス貴族の社交場で、現在はアフタヌーンティーが人気の館内レストラン『パンプ・ルーム』の噴水からは飲料用の温泉水が流れているので、ぜひとも訪れて効能あらたかな霊水を味わいたい。

そしてせっかくバースに来たのだから温泉に入りたい! という人はサーメ・バース・スパへ。 イギリス唯一の天然公衆スパで、屋上にある室外浴場では湯につかりながら町を一望できる。開放感いっぱいにクラシックな町並みを眺めれば、体の芯からお風呂の町にいる実感が湧いてくるだろう。

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世界遺産の町に横たわるクエスチョンマーク

バースの町が人気なのは温泉のためだけではない。スパの流行で18世紀にも栄えたこの町は、当時のジョージアン様式の建物が整然と並びユネスコ世界遺産に認定されている。直線的な外観が特徴の建築物がずらりと並ぶと際立つのは、圧倒的な統一感。その真骨頂が、市街中心にあるロイヤル・クレッセントやザ・サーカスなどの集合住宅だ。弧を描いたり円になって連なるテラスハウス群の美しさに、こちらも襟を正したくなる。ふたつの広場を空から見下ろすと、クエスチョンマークが浮かび上がる配置の妙。意外な遊び心があるのだろうか。

バースの建物は、この地方特産の鉱石バースストーンで作られており、柔らかなベージュ色が町を明るく清潔に見せて、温泉の町にふさわしい。石に彫られたモチーフが見どころのバース寺院は、ジョージアン様式でなくイギリス式ゴシック様式の建物が周囲に異彩を放つ。こうして時代ごとの名建築が温泉のまわりに集まる場所は、世界でも珍しい。バースは不思議の多い町だ。

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Info
●イギリス政府観光庁ホームページ(日本語)
www.visitbritain.com/ja/JP