世界一の潮の満ち引き
Bay of Fundy
(2016年8月5日記事)

New Brunswick & Nova Scotia


©Tourism New Brunswick

世界一の潮の満ち引き

カナダには、干潮と満潮の差が世界一大きい湾があることをご存じだろうか。カナダ東部、大西洋に面するニューブランズウィック州とノバスコシア州の間に位置するファンディ湾がそれだ。

奥行き300キロメートルにもなる巨大な湾は、陸に近づくほど浅くなる形状。波が湾の入口から奥まで移動してまた戻る時間と、潮の干満の時間がほぼ一緒であるという地形上の理由から潮の干満が激しく、ノバスコシア側では最大干満差は、なんと約15メートル。15メートルといえば、5階建てのビルほどの高さだ。日本で一番干満差の大きい有明海を望む島原湾でも、最大干満差は平均5.4メートルなので、その差は歴然。ファンディ湾の海水が完全に引くのは1日2回。それに伴い、約12時間で1,150億トンもの水が湾を出入りするのだという。ナイアガラの滝の水量がハイシーズンの時は毎秒約2,832トンなので、その水量の膨大さたるや推して知るべし。もともとこの地に住んでいたミクマク族の伝承では、ファンディ湾の潮の干満は、海で跳ね回る巨大なクジラによって起こされる、と語られている。


©New Brunswick Department of Tourism and Parks

潮の大きな干満差はまた、湾へと注ぐ河川で水の急速な逆流を起こす。湾岸最大の都市、ニューブランズウィック州セント・ジョンの中心を通るセント・ジョン川では、リバーシング・フォールズでそれが見られる。まず、雄大なセント・ジョン川が干潮の湾に注ぐことで急流や渦が生まれる。時間とともに、今度は湾の潮が満ち始め、それが川の流れを押し留め、潮だるみと呼ばれる、潮の流れが止まる時間帯が生まれる。そのあとは、湾の水位が上がるにつれてその水の力が川の流れを逆流させるのだ。場所によっては水流の速さは時速40キロにもなるそう。そして満潮をすぎると、湾の水位はまた下がりだし、次の潮だるみを生む。12時間半という時間でくり返し起こる驚きの自然現象だ。フォールズビュー・パークでこの逆流を見物したあとは、シティ・マーケットで新鮮なシーフードを見て回りたい。獲れたての大きなロブスターやホタテ、ウニのほか、ズワイガニや数の子も名物だ。


©Tourism New Brunswick

ホープウェル・ロックは海が作るアート

さて、ユネスコの生物圏保存地域に指定されている巨大なファンディ湾は、固有の生物群集を持つ地域でもあり、夏になるとザトウクジラにミンククジラ、絶滅を危惧されているタイセイヨウセミクジラなどのほか、イルカも訪れる。湾周辺ではホエールウォッチングなど、こうした野生動物の観察ツアーが組まれており、運がよければ、クジラやイルカだけでなく、アザラシに加え、アホウドリやアオサギなどの鳥類も見ることができる。激しい潮の満ち引きは海底の有機物を巻き上げ、太陽光によって多くの動物を養うプランクトンを発生させ、これが海の動物たちの楽園を作るのだ。セント・ジョンには、13メートルを超すクジラの骨格標本を含め、多様なクジラの骨格標本を集めた常設展を持つニューブランズウィック博物館があり、満潮や干潮の待ち時間にぴったりだ。


©Tourism New Brunswick

ニューブランズウィック側のポイントを他にも紹介しよう。素朴で力強い海岸線が美しいトレイルや、岩肌や崖が作る海の絶景が見られる。滝が流れ、苔むす緑豊かなファンディ国立公園は、ファンディ湾沿岸を保存するために造られた公園で、美しいトレイル多数。そのすぐ東のエンレイジ岬は絶景を誇り、また1838年から稼働する現役最古の灯台が見られる。


©Canadian Tourism Commission

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さらに湾の奥へ向かうと、干潮時のみ全容を現す巨岩ホープウェル・ロックがあるホープウェル岬が。この近辺は、高くそびえる岩の上に草木が生えた「フラワーポット」と呼ばれる岩が立ち並び、これらを見ながら干潮時に「海底」を歩ける場所として有名。何千年もの時をかけて浸食された岩が作り出す不思議な光景は一見の価値あり。


©Canadian Tourism Commission

カナダ東海岸の魅力いっぱい

湾内最大の島であるグランド・マナン島は、ジュラ紀の溶岩流が残る地質学的に貴重な島。地質観察ツアーに参加すれば、海底に眠る化石や宝石の原石を見ることができる。それだけでなくこの島は、新しいスーパーフードとも言われる海藻ダルスが自生する場所として、研究者たちの注目を集めている。北大西洋や北太平洋に生息し、カナダ大西洋州やアイルランドでは昔から食品や薬として使われてきたダルス。ビタミンCや抗酸化物質、タンパク質などが豊富に含まれているのだが、なんと油で調理することでベーコン味になると、海藻嫌いの人々から熱い視線を集める食材なのだ(日本では「アカハタ」という名で呼ばれることもあり、ワカメなどの海藻と同じ食べ方をしていることを言い添えておく)。


©Nova Scotia Tourism

©Tourism New Brunswick

ノバスコシア州側では、スプリット岬から湾の眺めを一望。刻々と変化が激しい潮流はずっと見ていたくなる。また湾の奥にあるトルーローの街では、逆流する川の急流でラフティングに挑戦できるのがエキサイティング。6月中旬から9月中旬ごろまでは、ファンディ湾全域で比較的温暖な気候が続く。8月の日中の気温は20度前後。海沿いや海上はいっそう涼しいので、着るものに気をつけて。9月半ばからは秋の気候となり、紅葉も楽しめる。
 

©New Brunswick Department of Tourism and Parks

©Tourism New Brunswick

Info
ニューブランズウィック観光局
www.tourismnewbrunswick.ca

ノバスコシア観光局
www.novascotia.com

ニューブランズウィック博物館
www.nbm-mnb.ca



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