世界に広まったエメラルドグリーンの祭典
Belfast
(2017年3月17日記事)

Northern Ireland


トロントでも3月の風物詩といえば、街中が緑色のシャムロック(三つ葉のクローバー)でいっぱいになるセント・パトリックス・デー。パレードを見学に行ってパブで緑色のビールで乾杯すれば、エメラルドグリーンの島アイルランドがぐっと身近に感じられるだろう。本国はもちろんのこと、アメリカ大陸やオーストラリアなど世界各国で盛大に祝われる「聖パトリックの日」。今回はそのパトリック聖人と縁の深い、北アイルランドのベルファストを紹介しよう。

歴史とファンタジーが溶け合う場所へ

ベルファストはイギリスに属する北アイルランドの中心地。アイルランド島は北アイルランドとアイルランド共和国に分れており、その歴史は非常に複雑である。実際近年まで深刻な紛争が続いていたが、今ではダブリン発の観光ツアーが登場したり、大学でアニメとゲームの大祭典が開催されたりと、新しい息づかいが感じられる都市だ。

ベルファスト市街は徒歩で歩いて回れる規模。パブやスーパーに生まれ変わった数世紀前の建築が現役で活躍する一方で、近未来的なショッピングモールが誕生したりと新旧のメリハリが随所に見られる。この町の中心に位置するのは、市庁舎とリネンホール図書館。往年のベルファストは麻が世界的な産業で、1906年に建てられた市庁舎も元はホワイトリネンホールという名前の麻の取引所だった。当時はこのエリアに麻工場が集中してベルファストの発展に大いに貢献し、“リネノポリス(麻の都市)”と呼ばれていたそうだ。


このリネンクォーターからレーガン川を越えた東側にあるのはタイタニッククォーター。映画でも有名なあの悲劇の豪華客船タイタニック号は、ベルファスト製の船だったのだ。今では町を代表する観光スポットとなったこの水辺の地区は、新しいベルファストの顔的存在。かつて大型船舶の塗装工場で現在はヨーロッパ最大規模の映画スタジオとなったタイタニックスタジオこと「ザ・ペイントホール」や、音や匂いを駆使してタイタニック号体験できる体感型博物館「タイタニック・ベルファスト」など、タイタニックに因んだ幾つもの施設がある。どちらも幾何学的でユニークな外観をしており、一見の価値ありだ。



ザ・ペイントホールで撮影された作品には2011年のスタートから現在まで続く「ゲーム・オブ・スローンズ」があるが、ベルファスト近郊では同作品のロケ地巡りもできるのでファンは要チェック。たとえばシリーズ2に登場した、樹木が鬱蒼と茂る「王の道」を覚えているだろうか? あのミステリアスな風景はセットではなく本物のロケーション。ベルファストから車で一時間ほど北上したダーク・ヘッジズという場所で、18世紀に植えられたブナの木々がトンネルのように枝を伸ばす様は、物語そのままの姿で感動してしまう。霧が多く湿度の高い曇り空の下だからこそ生まれた暗く神秘的な光景は、作品に大いなるインスピレーションを与えたに違いない。



ダーク・ヘッジズから更に20分ほど北上すると、北アイルランド最北端のジャイアンツ・コーズウェイに到着する。伝説では2000年前フィン・マックールという英雄が住んでいたとされる海岸の見どころは、約1kmにわたる奇岩群。古代の火山活動によって生まれた玄武岩の石柱がくっつき合うその数は約4万本。一見するとミニチュアの古代都市か摩天楼か、はたまた古墳か…。石畳状の低い岩や12メートルにも及ぶ細長い石柱が荒波をかぶる様子は、ダーク・ヘッジズとはまた別の異世界のようだ。


そして昨年ベルファスト東部のイーストサイド・ビジターセンターにオープンしたCSルイス・スクエアもぜひ立ち寄りたい場所。ベルファスト出身の作家ルイスの児童小説「ナルニア国ものがたり」は、映画版を観た方も多いだろう。スクエアではライオンのアスランや魔女をはじめ彼の作品の登場人物達のブロンズ像が迎えてくれて、童心に返ってしまいそうだ。ベルファストはファンタジーとつながるところ。そんな考えが頭をよぎる。

アイルランドの守護聖人を祝うセント・パトリックス・デー

さて、3月17日はセント・パトリックス・デー。5世紀のアイルランドにキリスト教を広めたパトリック聖人の命日で、アイルランドでは最も重要な祝日だ。イギリス本島ウェールズの裕福な家庭に生まれたパトリックは幼少時に海賊に誘拐されてアイルランドに連れ去られ、ベルファスト近郊のスレミッシュ山で奴隷として働かされていた。やがてキリスト教伝道師となった後はアイルランド各地に教会を建てて生涯にわたり布教を続け、461年に亡くなるとベルファストの南東約34kmの町ダウンパトリックに埋葬されたとされている。

パトリック聖人のエピソードで最も有名なのはアイルランドからヘビを追い出した逸話と、シャムロックを父と子と精霊の三位一体に例えた宣教活動だ。緑色のシャムロックが彼の宣教のトレードマークになったことが、その後のグリーン一色の祝祭につながっている。

春の訪れの象徴のようなセント・パトリックス・パレードも、北アイルランド紛争中はプロテスタントとカトリックの対立から開催されることは稀だったらしい。市民が思いのままにこの日を祝える現在は、当時のベルファストからすれば夢のような未来だろう。


All Photos:©Northern Ireland Tourist Board

Info
アイルランド政府観光局(日本語)
www.ireland.com/ja-jp

英国政府観光庁ベルファスト(日本語)
www.visitbritain.com/jp

ベルファスト観光局
visitbelfast.com


Belfast