辺境の小さな街は「ホッキョクグマの首都」
Churchill
(2016年8月19日記事)

Manitoba

辺境の小さな街は 「ホッキョクグマの首都」

マニトバ北部、ハドソン湾に面した小さな都市、チャーチル。北緯58度の緯度に位置するこの街は、ハドソン湾のごつごつとした岩だらけの海岸線と針葉樹林に囲まれている。北極圏まであとちょっとというところにあるこの街の夏は短い。8月末には終わりをつげ、9月からは秋が深まる。その後は急激に気温が低下し、10月からはもう冬だ。チャーチルは、その立地から野生動物との出会いの宝庫。季節に応じてベルーガやクジラ、そしてホッキョクグマなどを見ることができる。


©Travel Manitoba


6月末から8月末にかけては、北極海周辺に生息するベルーガが、食料となる魚を追ってチャーチル川の河口に集まる。白い体躯から、和名ではシロイルカと呼ばれる彼ら。大人の平均体長は約4メートルと大きくかなりの迫力だが、つぶらな瞳に、笑っているような口の表情がかわいらしいと水族館などでも大人気だ。専用ボートでベルーガ・ウォッチングに出かければ、人なつっこく好奇心旺盛なベルーガたちが周りに集まり、ともに泳いでくれることも。専用ボートは水面により近づけるため、近くで彼らを見ることができる。ウェットスーツを着てベルーガと泳ぐシュノーケリング・プランも人気だ。必要な装備は基本的に用意されているので安心。


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特有のクリック音や、キューキューという音を出してよく鳴くことから、ベルーガは「海のカナリア」とも呼ばれている。この音は、仲間同士でコミュニケーションをとるために出すものであることが知られているが、こんな風に人間に会う時には、ベルーガたちは人間に話しかけているのだろう。ハドソン湾に集まるベルーガの数は3,000頭とも言われ、夏のシーズン中はかなりの確率でベルーガに会える。この時期はまた、永久凍土に咲く珍しい花々も見ごろ。永久凍土とはいえ、短い夏には表面付近の土壌が溶けるため、いっせいに野草が花をつけるのだ。


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たくさんの野生動物との出会い

そして10月から11月中旬ごろには、今度はホッキョクグマがこの街に集結する。彼らは大好物であるアザラシが棲む北極でハンティングをするため、この地に集うのだ。冬になると結氷するハドソン湾は北極へ通じる道となるのだが、わけてもチャーチル周辺はハドソン湾でもっとも早い10月ごろから水が氷結する場所。ホッキョクグマの生息数は、世界で約2万2,000頭。そのうち約2,200頭がハドソン湾南部と西部に生息しており、これらがチャーチルに集まることから、チャーチルは「世界のホッキョクグマの首都」とも呼ばれている。この街の人口が約800人なので、人口よりも多いホッキョクグマが街周辺を闊歩していることになる。歩いていても、物陰からホッキョクグマがぴょんと顔をのぞかせるのではないかと思えるような街なのだ。実際、人里に近づきすぎたホッキョクグマを一時隔離して、人に近づいてはいけないのだと認識させるためのポーラーベア・ジェイルも街にはある。

それではツンドラ地域専用の、大きなタイヤをつけた特殊なバギーに乗ってホッキョクグマ・ウォッチングに出発! 海岸線まで迫った氷に雪が積もる極北の風景でホッキョクグマのベストショットを狙いたい。1度のツアーで、多いときには十数頭のホッキョクグマに遭遇することができるそう。

©Canadian Tourism Commission


近年では温暖化の影響により、北極圏の海の氷結時期が遅れ、溶け始める時期は早くなっている。ホッキョクグマが狩猟できる期間は短くなり、このことは個体数の減少につながる。また、地球温暖化による北極海の氷の減少が引き起こすホッキョクグマの生息域の圧迫、北極圏の環境汚染の問題もあり、ホッキョクグマは厳しい環境にさらされている。彼らとの貴重な出会いを通して、私たちは何を思うのだろうか。 チャーチル周辺には、ベルーガやホッキョクグマのほかにも、白い毛に覆われたホッキョクギツネやライチョウ、ホッキョクウサギなどの珍しくも愛らしい野生動物が生息している。散策の時には雪原に目を凝らそう。

オーロラが降る極北の風景

オーロラの観測ポイントとしても、チャーチルはたいへん有名。1年のうち約300日はオーロラ活動が観測されており、チャーチル・ノーザン・スタディーズ・センターではオーロラ観測ドームからそれを見ることができる。つまり室内でオーロラを見ることができる貴重な施設があるのだ。

そのほかにも、チャーチルには街の歴史や自然について詳しく知ることができる場所がいくつかある。現在は国定史跡となっている、1731年に建造された英国軍のプリンス・オブ・ウェールズ砦跡は、18世紀に英国人がこの地へ入植していたころ、ハドソンズ・ベイ・カンパニーが毛皮貿易などを行なうのに拠点とし、また英国がフランスからの攻撃を防ぐために建てたもの。11メートルもの厚さの壁と4つの角を持つデザインが特徴だ。廃墟になっていたものを国が修復したもので、パークス・カナダの専門スタッフが解説しながら案内してくれる。ヨーク・ファクトリーもまた国定史跡で、1832年に建設された貿易用毛皮の木造貯蔵庫が残っている。


©Canadian Tourism Commission

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エスキモー博物館では、1,000点以上にもなるイヌイットの絵画や彫刻を見ることができる。やはりホッキョクグマなどをモチーフにしたものが多く、恐ろしいものもあるが、なごむようなかわいらしい作品も多い。ギフトショップでは多数のホッキョクグマグッズのほか、イヌイット・アートが販売されており、旅の思い出にぴったり。 チャーチルのハイ・シーズンは主に7月から11月のあいだ。アクセスはウィニペグから飛行機で3時間と遠いが、はるばる訪ねる価値は十分。
 

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Info
チャーチル観光局
www.everythingchurchill.com

Churchill Northern Studies Centre
www.churchillscience.ca




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