古きよきグランドホテルと海軍の島
Coronado, California
(2017年6月2日記事)

U.S.A.

コロナドはサンディエゴ市街から気軽に行ける「島」。本当は半島なのだがいつしかコロナド・アイランドという呼び方が通称になったという、気軽に島旅気分を味わえるとっておきの場所だ。面積の多くをアメリカ海軍基地が占めつつも、3キロメートルにわたるコロナド・ビーチと歴史あるホテル「ホテル・デル・コロナド」に象徴されるリゾートアイランドとして知られ、家族連れや若者達でいつも賑わいを見せている。カリフォルニアの青空と太平洋を享受する小さな島に渡って、その様々な顔を発見しよう。


コロナド・ベイ・ブリッジを駆け抜けて

サンディエゴ湾に抱かれるような場所にあるコロナド島に渡るには、フェリーをはじめバスや車や水上タクシーなど様々な交通手段がある。たとえばダウンタウン中心のブロードウェイ通りから市バス901番に乗ると、市街をゆっくり南下しながら本土と島を結ぶコロナド・ベイ・ブリッジへ。ゆるやかにカーブした美しい橋は全長約3.4キロメートルあり、ここからは市バスに乗っているのを忘れてしまうほど贅沢な空中散歩の時間が始まる。アメリカ鉄鋼協会から「全米で最も美しい橋」と評された橋は、建築そのものの美しさとそこからの眺めの美しさの両方を備え持っている。軍艦の往来に支障がないよう空高く架けられた橋の下を眺めれば、そこにはどこまでも続く青い海、ヨットハーバー、海軍基地。抜けのよいパノラマをはるか眼下に上空を滑らかに進む爽快感は、行きか帰りのどちらかで一度は体験したい。



空をふわっと飛んでいるような体感が残るまま、バスはコロナド島に到着する。そのまままっすぐ進む先は海軍航空基地の前。入口の大きな飛行機の模型と剛健な正面門に、ここが原子力空母の母港として働く軍の島だとあらためて考えさせられる。その厳しさと裏腹に陽光が燦々と降りそそぎ、花々が咲き誇る周囲の民家の庭先はこの上なく穏やかで、奇妙に印象的な光景だ。


基地前から踵を返して島の大通りであるオレンジ通りを走り出すと、それまでの印象がガラリと変わる。道路沿いにカラフルな自転車が並ぶ店先や小さなカフェやセレクトショップが並び、海水浴に向かう友人同士や家族連れが笑顔で通り過ぎていく。ここからはコロナド島の明るさあふれる領域だ。ホテル・デル・コロナド前でバスを降りると、赤い屋根に真っ白な外装の建物群が目の前に現れる。1888年にオープンしたホテル・デル・コロナドは、当時は世界最大のビーチリゾートホテルだった。カリフォルニア州最古の木造ホテルでもあり、ここに来たらドーム型の木組み天井が見事なクラウンルームや、美しい鳥籠のような手動式エレベーターは必見だ。130年近い歴史を辿ると、歴代のアメリカ大統領からハリウッド俳優まで錚々たるセレブリティーの名前がゲストリストに連なるが、今でも最もアイコニックな存在なのがマリリン・モンロー。彼女の代表作『お熱いのがお好き』が撮影されたのが、ホテル・デル・コロナドなのだ。海辺のシーンでモンローの背後にそびえるヴィクトリア建築の建物は、眩(まばゆ)いほど美しいスター女優に負けない存在感を放っている。



このホテルがここまで長い間人々に愛されているのは、格式がありながらとてもオープンだから。目の前の砂浜に遊びに来た人達も気軽に立ち寄ってお土産を物色したり、廊下に架けられたモンローの写真を観て歩いたり、カフェで一休みしたりと、誰もが思うままの楽しみ方をしている。地元サンディエゴの人達は皆、幼い頃ここでアイスクリームを買ってもらったり、ビーチで無邪気に砂遊びをした思い出を胸に閉まっているのかもしれない。懐かしくありながらいつでも手を広げて招き入れてくれる。ホテル・デル・コロナドはきっとそんな存在なのだろう。

この島に来たら確かめてほしいのが金色の砂。ホテル・デル・コロナド前のビーチに出て濡れた砂をよく見てみよう。まるで砂金が入っているように、太陽を受けてキラキラ輝く様はちょっとした驚きだ。のんびり海辺の休日を過ごす人達に混ざってゴールドラッシュ気分を味わうのも、コロナドのささやかな楽しみ方だ。



コロナド特製ビールとサンディエゴ湾の潮風を感じる夕暮れ

コロナドからフェリーでダウンタウン側に渡る時に利用するのが、コロナド・フェリー・ランディング。真近にせまるサンディエゴ湾に面して緑地が広がっており、芝生の上やフェリー乗り場から一望する対岸のダウンタウンが見もの。夕暮れが近づくにつれて輝き出す海の向こうのビル群の姿は、ノスタルジックなコロナドと対象的にモダン都市然としている。この一角には自転車のレンタル店があるので、島でサイクリングを楽しむ時の起点でもある。



そして島を発つ前に立ち寄りたいのが、フェリー乗り場の近くにあるコロナド・ブリューイング・カンパニー。今では海外にもビールが出荷される有名店だが、元々はコロナド出身の兄弟が始めた手作りビールの先駆け店。クラフトビールの世界大会でチャンピオンに輝いた「アイランダーIPA」を始め、多種多様なオリジナルビールがずらり揃う。独自の製法で作られた新鮮な地ビールが、島を巡った後の乾きを美味しく癒やしてくれるだろう。

Info
コロナド・ビジター・センター
coronadovisitorcenter.com

サンディエゴ公式観光情報
www.sandiego.org

 

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