ケベック州のワイルドサイドを満喫するガスペ半島の旅
Gaspé Peninsula, Quebec Canada
(2017年8月11日記事)

Canada


© TQ / Christian Savard


 1534年にフランス人探検家のジャック・カルティエによって見出されたガスペ半島は、フレンチカナダの発祥地。2500年以上前から暮らす先住民族ミクマク族の言葉で「地の果て」を意味する同所は、ヨーロッパ人が新大陸上陸の第一歩を踏み出す大地となった。ジャック・カルティエがヌーベル・フランス植民地化を宣言した町ガスペや、フランス本国とミクマク族との毛皮貿易で栄えたマタネなど、現在も公用語をフランス語とするガスペ半島とフランスの歴史は長い。そういえば、ジャック・カルティエは、フランスの中でも独立心が強く独自の文化を誇るブルターニュ地方出身のブルトン人だ。古代の巨石文化で有名なブルターニュ出身の彼が、長い航行の末に大西洋に身を構える巨大なペルセ岩を発見した時はどんな気持ちになったのだろう? 自然の壮大さを肌で感じられるケベック州のワイルドサイドまで、探検家気分で出かけてみたい。
肝心なガスペ半島への行き方だが、モントリオールとガスペの町を結ぶVIA鉄道は2013年以来、運行休止のまま今に至っている。半島突端のガスペだけでなく、付け根の町マタペディアまでも鉄道が絶たれてしまったのは痛い。では、どうやって行くのかといえば、まずガスペ空港行きの飛行機がある。そして、モントリオールから長距離バスのオルレアンバスに乗れば、ガスペ半島の町々に細やかに停車してくれる。もちろん、自動車やバイクを飛ばしてロードトリップもありだ。半島の海岸沿いをぐるりと囲む国道132号線を走り抜ければ、すべてを包み込むような大自然との一体感が生まれてきて、唯一無二の体験ができるだろう。


© TQ / Pierre Carbonneau

大自然の造形は芸術的インスピレーションの宝庫

ガスペ半島の中でもフォリヨン国立公園は、荒削りな自然を感じるのにもってこいの場所だ。北米大陸東部を縦断するアパラチア山脈の北限近くにあるこの公園は、ケベック州初の国立公園。ハチドリのくちばしのように、細長いガスペ半島尖端のガスペ岬には赤い屋根の灯台が立っていて、セントローレンス湾の大海原を見守る孤高の姿が美しい。すぐ後ろに深い森の迫った断崖絶壁の迫力や、そこから望む海の透明度とスケールも圧巻だ。クジラが波と戯れる姿や、ヘラジカの親子と遭遇できる僥倖も、夕焼けと赤く染まる岩肌が一体化する景色も、心に焼き付けておきたくなる。カナダ150周年の今年、フォリヨン国立公園はディスカバリーパスがあれば入園無料。夏が過ぎても秋の紅葉や雪山など、公園の様々な表情を見に行くきっかけになるかもしれない。
一方、ガスペジー国立公園は今年で創園80周年を迎える。公園設立の目的のひとつに、アトランティックサーモンの保護があり、園内を流れるサント・アンヌ川での鮭釣りはキャッチ&リリースが定められている。ザブザブと川に入って、両手に抱えるほどでっぷりとした鮭と触れ合い、再び放流する。無心で鮭と戯れるという滅多にない経験ができるのは、今年は9月30日までとなっている。アトランティックサーモンは他にもダートマス川、サン・ジャン川、ヨーク川など広いエリアでフライフィッシングを楽しめる。
ガスペ半島にはユネスコ世界遺産のミグアシャ国立公園もあり、魚類から四肢動物への変化が見受けられるデボン紀の化石が数多く発掘されている。ひょっとすると、アトランティックサーモンと私達も化石の一部になってもおかしくないのでは、などと思えてくるのも悠久なる自然の力に違いない。



© TQ / Paul Hurteau ; Claude Parent

© TQ / Claude Bouchard

© TQ / Christian Savard

© TQ / Philippe Renault

何億年も昔の化石が眠る地の果てへ

さらにガスペ半島の自然の驚異として見逃せないのが、アーチ型の大きな穴が特徴的なペルセ岩。カツオドリの繁殖で世界的に知られるボナバンチュール島の手前にあり、セントローレンス湾にどっしりそびえる高さ15メートルの巨大な奇岩だ。こちらもデボン紀に形成された石灰岩で、三葉虫や腕足動物など4億年ほど前の化石がぎっしり埋まっている。ジャック・カルティエがガスペ半島にやって来た当初は3つのアーチを持っていたと言われるこの岩は、しばしば霧に包まれる独特の風貌が想像力をかき立てる。そのせいか、ミクマク族の時代から様々な伝説が語り継がれ、第二次世界大戦中ガスペ半島に滞在したシュルレアリストのアンドレ・ブルトンは、ペルセ岩から霊感を得た詩を作っている。
ペルセ岩とボナバンチュール島の最寄りの町はペルセで、10月末までホエールウォッチングクルーズやボナバンチュール島行きの船が出港する。数種類のクジラが生息するこの海域で、運がよければ大変めずらしい大西洋セミクジラと遭遇できるかもしれない。
アウトドア三昧のガスペ半島では、美術館にも青空スペースが生かされている。半島西部の町サント・フラヴィにあるサントル・ダール・マルセル・ガニョンでは、マルセル・ガニョン作の80体以上の彫刻がサンローラン川の水辺に設置され、来館者を迎えてくれる。潮の満ち干きや日照など自然のコンディションによって刻々と表情を変えるこの人物群像は、見ていて飽きることがない。この美術館は併設されたレストランにも注目したい。カナダでも海の幸のおいしさで評判のガスペ半島の食材を使った料理を、朝食から夕食まで味わえるのだ。昔ながらのケベック風食パンのパン・ダビタンや採れたてのオマール海老を光あふれる自然と芸術作品の傍らで味わうひとときは、この上なく贅沢な時間になるだろう。


Info
ガスペジー観光局HP(英語)
www.tourisme-gaspesie.com

ケベック州観光局HP(英語)
www.quebecoriginal.com/en-ca

サントル・ダール・マルセル・ガニョンHP(英語)
www.centredart.net

 

Gaspé Peninsula, Quebec Canada