オランダとカナダを結ぶチューリップを巡る旅
Lisse and other cities
(2017年4月7日記事)

Netherland


オランダとチューリップ。永遠の定番のような組合わせだが、当然ながらチューリップが花開く時期でないと目にすることができない光景だ。一面に咲き誇るチューリップと巡り合う機会は、今この季節しかない。カナダでチューリップといえばオタワのカナディアン・チューリップ・フェスティバルが有名だが、これは第二次世界大戦中にオランダのユリアナ王女が滞在先のカナダでマルフリーテ王女を出産した際、オランダ国外で生まれた子女でも王位継承権が得られるようカナダ議会が特別に計らったのがきっかけ。以来、カナダへの感謝の証しにオランダからチューリップの球根が送られるようになったというエピソードがある。カナダとの友好のシンボルとなったチューリップが満開になる、春のオランダを訪ねてみよう。


花の盛りにはキューケンホフ公園へ

うららかな日差しとカラフルな花々をあちこちの街角で見かけるオランダ。そこを市民の足代わりである自転車に乗って、さっそうと駆けぬける人達。そんな光景を見ているだけで明るい気分になる春先のオランダで花を巡るなら、その名も「砂丘と球根地域」にあるキューケンホフ公園とその周辺へ。

キューケンホフ公園があるのは南ホラント州のリッセという小さな町。18世紀から球根栽培で発展したこの町に、キューケンホフ公園が作られたのは1949年。世界一の輸出量を誇るオランダの花市場を促進し、ヨーロッパで作られる花類を展示するために誕生した公園だ。今では32ヘクタールの敷地に700万株を上回る花が咲く中、800種類以上のチューリップが開花する。運河を思わせる小河の流れる公園内はいくつかのセクションに分かれており、馴染み深いイングリッシュ・ガーデンや風情ある日本庭園など、趣きの異なる庭園でそれぞれ春の花が満開。その高い人気にもかかわらずキューケンホフ公園の開園は数週間限定で、今年は5月21日までだ。

この短い盛りに絞ってお披露目される花々を見ようと、リッセには世界中から観光客がやってくる。公園では毎年オランダにちなんだテーマが決められてそれに沿った展示が企画されるが、本年のテーマは『ダッチ・デザイン』で、20世紀のオランダ美術を代表する抽象画家ピエト・モンドリアンの作品が取り上げられている。直線と3元色で構成された、パキッと色鮮やかなモンドリアンの世界に入り込んでみたい。花盛りの賑わいは、4月22日のフラワーパレードで最高潮に達する。キューケンホフ公園を経由して、ノールドワイクからハーレムまでの40kmの道のりを色とりどりの花山車が行進する大イベントだ。



またキューケンホフ公園の入り口のレンタルバイク店では自転車を貸し出しているので、この周辺に広がる花畑を訪ねてみてはどうだろう。坂のないオランダの道はサイクリングにもってこい。色とりどりのストライプ模様のような花畑の間を風を切って走り抜ける、なんとも幸せな時間を過ごせるはず。

キューケンホフ公園の向かい側には、17世紀に建てられたキューケンホフ城がある。広大な敷地に囲まれ、内部の装飾も絢爛豪華でまるで王族の城のようだが、元々は個人の別荘。当時の持ち主は日本とも馴染みの深いオランダ東インド会社の幹部だった。海洋貿易で空前の富を得た人々は、このように豪奢な別宅を持つのが常だったようだ。今ではキューケンホフ城は、オランダの黄金時代の豊かさを伝える証言者の役割を務めている。



競り市から運河のマーケットまで楽しみ方いろいろ

リッセの近郊にも花の見どころは多い。世界最大の花の競売場を持つアールスメール花市場を訪れてみるのも面白い体験だ。キューケンホフ公園から車で20分強のアールスメールは、広大な花市場をはじめ膨大な苗床や花の研究施設が集まることから「花のウォールストリート」や「世界の花の都」の別名を持つ町。平日の朝7時から始まる競売にはできるだけ早く行ったほうがいい。競りに出された花はほんの数秒で売買が決まってしまうから、市場の活気と新鮮な花を鑑賞するのも早い者勝ちなのだ。

花市場から町の西側に広がるヴェシュタインデルプラッセン湖に向かうと、アールスメール歴史庭園がある。17世紀初頭のイチゴ栽培から始まってその後の花の栽培と発展を辿った、この町の植物栽培の歴史を紐解く庭園。湖に面したビニールハウス内は花々が芳しく、ギフトショップでは古い時代に栽培された種類のリンゴや梨などが売られている。小さな自然に囲まれた懐かしい気分になる庭園だ。



ここからアムステルダムまで移動して、今度は運河に突き出したフラワーマーケットに見参しよう。1862年から続く伝統あるマーケットは、中世の頃の旧市街を取り囲むシンゲル運河に停泊している。ずらりと軒を並べる生花店には、チューリップをはじめヒヤシンスやクロッカスなど四季折々の切り花や球根、サボテンの苗や野菜の種、さらには花が描かれた木靴までもがにぎやかに勢揃い。運河の対岸から見ると、水辺とカラフルなフラワーショップの背後にアムステルダム名物の細長い住居が整列して、実に絵になる風景だ。この辺りはカフェや小さな店が多く、ゆっくり散策するのも楽しいエリアだ。

他にもアムステルダムのチューリップ博物館や世界最大級の花畑が広がる近郊のザイプ地域、クラシカルな庭園を彩る花々が可憐なファン・ローン博物館など、少し足を伸ばせば行ける見どころは多い。春のオランダはフラワーパワー満開で、訪れる者をあたたかく迎えてくれる。

All Photos ©NBTC

Info
オランダ政府観光局(日本語)
www.holland.com/jp/

キューケンホフ公園
keukenhof.nl

アールスメール花市場
www.royalfloraholland.com


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