ユーコン準州最北部のコミュニティへ
Old Crow, Territory of Yukon
オールドクロウ、ユーコン準州(2015年5月1日記事)

Old Crow, Territory of Yukon

©Government of Yukon
カナダを上下にざっくり分断すると、その上部は左からユーコン、ノースウエスト、ヌナブトの3つの準州で構成される。北極圏とその近隣に位置するこれらの地域にはファーストネーションやイヌイットの人々が多く住み、今も独自の文化や生活様式が守り継がれている。ユーコン準州のオールドクロウは、陸路でたどり着くことのできない場所。けれどオタワやバンクーバー、ホワイトホースから空を飛び、オールドクロウ空港に降り立てば、すぐそこは町の中心地。日本人とよく似た顔立ちのヴァントゥット・グウィッチン族の人達の生活の場だ。未知のカナダを発見しに、果てしないタイガの向こうに降り立ってみたい。

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ポーキュパインカリブーと共生するコミュニティ

ユーコン準州には氷河期の後からファーストネーションの人々が住んでいたと言われ、現在も8つのグループがそれぞれ違う言葉や文化を持ち続けている。オールドクロウは、ヴァントゥット・グウィッチン・ファーストネーションのコミュニティ。ヴァントゥット・グウィッチンとは「湖の人々」という意味で、町名のオールドクロウは1870年代に亡くなった酋長の名前に由来する。

確かにこの辺りは空の上から見ると、一面の緑の中に湖が水玉模様のように散らばっているのがわかる。その合間を蛇行しながら流れるのは、ユーコン川の支流ポーキュパイン川。この川のほとりに佇む斬新な建物は、ジョン・ティズヤ・センターだ。オールドクロウを知るためにぜひ訪れたいこの文化複合施設は、地元の人々と遠方からの訪問者が集う場所。グウィッチンの人々の歴史と暮らしぶりがぎゅっと詰まった貴重な資料館でもあり、彼らの生活と切り離せない存在のポーキュパインカリブーについても知ることができる。

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ポーキュパインカリブーとは、春と秋にポーキュパイン川を渡るカリブー。12万頭強とも18万頭強ともいわれる群れの年間移動は2400キロメートルに及び、地球最大規模だという。太古から狩猟の伝統を持つグウィッチンの生活は、彼らと共にあった。その肉を食料にし、骨や角を道具にし、毛皮を衣料や工芸品にして、余すことなく利用する。赤身の干し肉や脂で固めた「ペミカン」など、厳しい自然に適した保存食に姿を変えたカリブーが、焼立てのパン「バノック」と一緒に供される食卓も、大切に受け継がれてきた食文化だ。グウィッチンの人々は、沿岸地域の石油やガス開発がポーキュパインカリブーの生態系を破壊してしまうのを危惧しており、現在ヴントゥト国立公園とアイブバビク国立公園でのカリブーの保護活動が進んでいる。「カリブーは我々の生活の中心」と語る言葉の中には、 伝統を守りながら生きる彼らの誇りがある。

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世界に向けて「ニュースです」

長い間この隔離されたコミュニティの姿を世に伝えていたのが、グウィッチン出身の名コラムニスト、イーディス・ジョージイ。1962年から2005年までホワイトホース・スター紙に掲載されたコラム「Here are the news」はトロントやエドモントンの新聞でも取り上げられ、ドイツ語、イタリア語、スペイン語など各国語に翻訳された。オールドクロウの日常生活や四季折々を伝えるその文章は、とても素朴で温かく惹きつけられる。晩年にはウェブでコミュニティの様子を発信し続けたイーディスは、今もなおオールドクロウのシンボル的存在だ。

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Info
●ユーコン準州観光局公式サイト(日本語)
yukonjapan.jp