謎の地上絵とリトル・ガラパゴスを目指して出発
Paracas and the Ballestas Islands, Ica, Peru
(2017年10月13日記事)

Peru

 

旅行者にとって南米ペルーはマチュピチュ遺跡を目指してアンデス山脈に向かうコースが圧倒的に多いが、他にも熱帯雨林ツアーやチチカカ湖に浮かぶ島ステイなど、冒険的で濃厚な魅力の詰まった楽しみ方が山のようにある国だ。今回紹介するのは、太平洋の海岸町パラカスとそこから小舟で行くバジェスタス島。リマから車で4~5時間で到着するパラカスは、ペルー人にも人気のビーチリゾート。近年のホテル開発ブームもあって豪華ホテルが立ち並んでいるが、一方で海岸には簡易な宿泊施設があり、日本の海の家を連想させるのどかさも漂う。バジェスタス島ツアーはパラカスの船着き場から出発するエコツアー。動物保護と環境保護のため島に上陸することはなく、周りをぐるりと回遊するツアーだが、鳥達が所せましとびっしり群がる姿は、まぶたから離れなくなるほど印象的。バジェスタス島の別名はリトル・ガラパゴス。ここもまたペルーの驚異的な自然を体現する場所のひとつだ。 パラカスはペルーのイカ地方にある海岸リゾート地。首都リマからパン・アメリカン・ハイウェイを南下すると、途中に打楽器カホンの発祥地といわれるチンチャの町や、ペルーの国民酒ピスコの産地が通り過ぎていく。「ペルー=コンドルの飛ぶアンデスの山々」というイメージを抱いていると、車窓からの景色が新鮮で見飽きることがない。ペルーの国土は太平洋沿岸のコスタ、アンデス山脈を擁する高地シエラ、アマゾン流域のセルバに大別され、一番面積の小さなコスタに人口が集中している。

太平洋沿いのパン・アメリカン・ハイウェイを南に疾走

パラカスに向かう道中でも、フルーツ売りのスタンド、高速道路を横切る人、海水浴に出かける家族連れなど、人々の生活を垣間見られるのが楽しい。この道路は地上絵で有名なナスカに続いているが、かの砂絵のある地帯だけでなく海岸線はずっと砂漠地帯だ。パラカスという名前もケチュア語で「砂の雨」という意味を持っており、近くには幻想的なオアシスの町もある。
パラカスに到着すると、気になるのが名物のシーフード料理。中心部にあるチャコ海岸には、小綺麗なレストランが並んでいる。新鮮な魚介類のセビーチェはもちろんおすすめだが、すでにリマでおいしいセビーチェを堪能してきたならシーフードのミックスフライや海の幸が贅沢に入ったペルー版パエリヤを頼んでみたい。香ばしい衣の小ぶりの魚介類や濃厚な旨味の沁み込んだパエリヤが、クスコビールや本場のピスコサワーと相性ぴったりなのだ。パラカスに来たら、潮風の通るオープンテラスで開放感いっぱいの食事を味わおう。ただしバジェスタス島ツアーは午前中のみ開催なので、何はともあれまず島へ。その後でゆっくり海の幸を賞味したい。

さて、バジェスタス島行きの船が発着するのもチャコ海岸だ。小ぶりの遊覧船に乗り込んで30分ほど沖に向かう。すると途中のパラカス半島の北端に、ここはナスカかと見紛うような砂絵が忽然と現れる。その正体はエル・カンデラブラ(燭台)と呼ばれる地上絵だ。高さ約181メートル、幅約70メートルの巨大な燭台は本来岩を削った彫刻なのだが、吹きすさぶ砂に覆われて砂絵の姿を見せており、まさしく人間と自然の共作。製作時期や目的はわからず、ナスカと同様に謎だらけのまま姿を見せている。


鳥と海獣のひしめくサンクチュアリへようこそ

さらに海を進むと、バジェスタス島が前方に見えてくる。正確には小島が集まった諸島の表面は、まるで模様のような黒い影がびっしり。これがバジェスタス島をリトル・ガラパゴスたらしめる、おびただしい数の鳥の大群だ。皆同じくらいの大きさで一見区別がつかないが、よく見ると様々な種類が集っている。絶滅危惧種のフンボルトペンギンや鮮やかな朱色の嘴と足を持つインカアジサシをはじめ、ウやカツオドリやペルーペリカン達が、ちょこちょこ動いたり、空に飛び立ったり、海に飛び込んだり。船が上陸することはないとよく分かっているようで、間近に迫っても驚くことなく至って呑気そう。確かにいろんな意味で、この友好的距離は大切だ。島に近づけば近づくほど、原始を感じさせる鳥の鳴き声とにおいが強烈になってきて、小舟に乗った我々は鳥と自然の迫力に凌駕されるのだから。そのなんとも言えないにおいの元は、グアノ。グアノとは島の表面に白く貼り付いた液体のように見えるもので、鳥の排泄物や死骸や餌の魚等が混ざり、数千年から数万年の長い年月を経て化石化した物体。と聞くと不気味だが、これが貴重な高級肥料となるため、かつては乱獲されたり、グアノを巡って戦争が起きたほど。1500年前から肥料として使われているので、現在おいしいペルー料理を食べられるのも、グアノ抜きにはあり得なかっただろう。 圧倒的な数の鳥とグアノの匂いに目や鼻が慣れてきた頃、島のまわりをゆったり進む船の前に現れるのが、小型アシカのオタリアやオットセイなどの海獣らが暮らすコミューン。いかにも強そうなオスが堂々とハーレムを形成してメス達をはべらす姿に、またしても動物達のありのままの生き様を垣間見る。バジェスタス島ツアーは彼らの可愛らしさや愛らしさを鑑賞するためではなく、生きとし生けるもののむき出しの力強さ、たくましさ、そしてそこはかとない滑稽さを思い出すための航海なのではないだろうか。約2時間のクルージングで出会う異界のような光景と生命力の塊のようなエネルギーは、たしかにこの地球が有機体であることを否応なく実感させてくれるのだ。






Info
ペルー政府観光庁HP(日本語)
www.peru.travel/jp

 

Paracas and the Ballestas Islands, Ica, Peru