褐色に染まる迷路のようなゴシック都市
Siena
(2017年3月3日記事)

Italy


長靴型をしたイタリアの中西部、弁慶の泣き所にあたる場所に位置するトスカーナ州。 歴史地区に指定された古都があちこちに点在し、至高の芸術品の数々と魅惑的な景観を誇るこの地方は、世界中の人々を引きつけてやまない。 国際空港を擁するフィレンツェからバスや電車で約1時間半南下したシエナも、トスカーナの豊かな大地と細かく入り組んだ町並みが中世のまま残る特別な場所として存在している。

見どころが集まる旧市街を歩く

シエナの最初の印象は、鉄道で到着するかバスで到着するかで大きく違う。国鉄シエナ駅から第一歩を踏み出せば、ショッピングモールが併設されたガラス張りの駅舎に「意外とモダンな町だな」と思うかもしれない。ゆるやかなエスカレーターを乗り継いで地上に出ると、そこは小高い丘の上。そう、シエナの町はなかなか高い場所にある。驚くほど長いエスカレーターは、多くの市民を助ける心強い足なのだ。ここからは市バスも出ているが歩けない距離ではない。旧市街入口のカモッリア門まで歩き、門をくぐって15分ほどで街の中心に到着する。

一方バスでシエナ入りする場合、到着するのはサン・ドメニコ広場。この青空バスターミナルは旧市街の中心近くにあり、最初からシエナらしさたっぷりだ。鉄道でもバスでもそれぞれ違ったシエナの顔を知ることができるが、迷ったらバスでのシエナ入りをお勧めしたい。なにしろシエナは起伏の激しい迷路のような町。上へ下へと歩き回るので、町歩きを始めるまでは健脚を保持しておきたい。


脚力が必要なシエナだが、街の規模は決して大きくない。うねった細い道々の中心にあるのは「世界一美しい広場」と呼ばれるカンポ広場。この広場は年2回の裸馬の競争「パリオ」で世界的に有名だ。シエナの旧市街は中世からコントラーダと呼ばれる地区に分かれており、現在も17地区が残る。パリオに出場できるのはそのうち10地区。開催中は町中がコントラーダごとの旗で埋め尽くされ、時代行列とレースが行なわれるカンポ広場は熱狂の頂点となる。シエナの象徴といえる人と馬の祭典は、幾世紀を越えても変わらずに続いている。

カンポ広場にはマンジャの塔とそれに隣接したプッブリコ宮殿がある。14世紀に建設されたマンジャの塔は88メートルあり、イタリア全土で3番目の高さ。一際のっぽでどこにいても目に入ってくるが、レンガの赤味と白い大理石の組み合わせが町全体の色合いと一体化し、風景にしっくり溶け込んで調和している。塔の中に入って階段を黙々と頂上まで登ると、シエナの町とトスカーナの緑豊かな丘陵が広がって息をのむ絶景。ここから見下ろすと、足元のカンポ広場が扇状に広がっているのがよくわかる。


プッブリコ宮殿の内部は市営美術館になっており、シエナ派絵画の宝庫。中でも 「平和の間」の壁に描かれた「善政と悪政の寓意と効果」シリーズは、シエナ派の画家ロレンツェッティの大作だ。14世紀の都市と田園の生活を活き活きと描いた作品群は、時間を忘れて見入ってしまう面白さがある。

カンポ広場の西側から曲がりくねった道を進むと現れるのが、イタリア・ゴシックの代表建築であるシエナ大聖堂(ドゥオーモ)。ふんだんに彫刻が施されたピンクと白のファサードに、まるでゴージャスなお菓子の家に足を踏み入れるような気分になる。そして一歩中に入ると圧倒されるのが、シエナのシンボルカラーの白黒ストライプの支柱群だ。際立つコントラストが力強いインパクトを生み出して、他に類を見ない身廊となっている。この大聖堂は床絵が傑作なので、足元をしっかり見下ろして見学しよう。14世紀から16世紀にわたって作られた大理石のモザイク画は、宗教的モチーフの他にシエナの歴史を描いた作品も。また天空の門ツアーに参加すれば、ドゥオーモの修復室を見学したり、建物の外に出てシエナの町を見晴らしたり、ドゥオーモが何倍もよくわかる。満天の星が描かれた天井を間近で見れば、空に近づいたような迫力だ。



ところでドゥオーモには頓挫してしまった拡張計画があって、その名残である未完の建物壁はドゥオーモ付属美術館の一部として見学可能。巨大な窓枠からぽっかり青空がのぞく一枚壁は独特の景観を生み出しているが、その上に登った時のパノラマがまた圧巻。なんだかこの町では登らされてばかり。だがこの眺めを見れば、疲れなど吹っ飛んでしまいそうだ。

青空の下が似合うシエナの美食

猪をはじめジビエ料理やパスタのピチなど、食文化も豊かなシエナ。当然それに合うワインも充実していて、代表的なローカルワインは赤のキャンティ。シエナ〜フィレンツェ間のキャンティジャーナル街道で、ぶどう畑や山の景色を満喫しながらリストランテで乾杯したり、お土産のワインを選ぶのもいい。旧市街に接するメディチ家の要塞に作られた国立エノテカに行くと、イタリアワインの展示観賞と試飲ができる。グラス片手にレンガ造りの素朴なテラスに出れば、とたんに時間がゆったり流れ始めるだろう。そしてシエナとその付近には評判のジェラート屋さんがいっぱい。目の前に並んだ何十種類のフレーバーはどれも魅力的で、一度食べるだけでは終わらない。どこまでも青い空の下でジェラートを食べる幸せを教えてくれるのも、歩いて楽しいシエナだからこそ。



Info
イタリア観光局(日本語)
visitaly.jp

国立エノテカ
www.enoteca-italiana.it


Siena