北欧の薄明かりの中できらめくクリスマス
Stockholm Uppland
(2017年12月8日記事)

Sweden

©Henrik Trygg/imagebank.sweden.se

 

「水の都」と呼ばれるストックホルムは、14の島々から成るスウェーデンの首都。12月のストックホルムはノーベル賞授賞式と晩餐会で世界中から注目されるが、現地の人々の楽しみはなんといっても町中のあちこちに立つ「ユール・マルクナド」ことクリスマス・マーケットだ。12月後半に差しかかると午前もだいぶ経った頃にようやく陽がさし始め、午後2時に空が陰り出して夕方には辺りが暗くなる。そんな北欧特有の短くはかない日照時間とカナダに負けず劣らずの寒さにもかかわらず、今年もマーケット会場は年に1度のお祝い気分に湧きあがる。熱々のグロッグ(ホットワイン)で身も心も温まりながら、真冬の町に繰り出したい。
ヨーロッパの他の国々同様、スウェーデンでもこの季節は大きな都市から小さな村までクリスマス・マーケットが風物詩だ。ストックホルムでは毎年、アドベント(降臨節)前の11月後半から主なマーケットが現れる。町歩きにもお勧めのエリアで開催される3つのクリスマス・マーケットを紹介しよう。
まずはスターズホルメン島のガムラスタンのマーケット。ガムラスタンは「旧市街」という意味の名前だけあって、ストックホルムの発祥地。王宮やノーベル博物館など主要な見どころが集中し、老舗の専門店やカフェが集まるストックホルム訪問には欠かせない場所だ。冬の間は昼間でもぼうっとガス塔が灯り、その向こうにストックホルム大聖堂が佇む町並みはこの上なく幻想的。中世の趣あふれる石畳の通りには、幅1メートルもない細くて古い路地が入り組む。まるでおとぎ話の中にいるようなガムラスタンのクリスマス・マーケットは、1915年に始まった。ガムラスタンの中心であるストールトルゲット広場に立つ巨大なクリスマスツリーと、周囲に立ち並ぶ小屋の赤い色が気分を盛り立てる、ストックホルムを代表するクリスマス風景だ。サンタクロース人形やツリー用オーナメント、赤白のキャンディケイン、手作りのドライソーセージなどが売られる小屋を覗いていると、クリスマス気分がますます盛り上がる。12月23日まで毎日開かれるので、何度でも足を運びたくなりそうだ。

©Ulf Lundin/imagebank.sweden.se
©Ulf Lundin/imagebank.sweden.se
©Ola Ericson/imagebank.sweden.se



陽の光のない世界で幻想的なクリスマス体験

続いてストールトルゲット広場から橋を渡って行けるのがクングストレーゴーデン(王様の公園)のクリスマス・マーケット。スケートリンクを中心に南北に長い庭園にずらりと並ぶ小屋の中には、ハート型のジンジャーブレッドやリースに混ざって幸運の赤い馬ダーラナホースの姿を見つけられるかも。スウェーデン名物の可愛らしい馬は北欧雑貨店などでも見かけるが、真っ赤な姿がクリスマスにぴったりなので、よい思い出の品になるはず。クングストレーゴーデンの北側に建つNKデパートやPKハウスも毎年趣向を凝らしたショーウインドーやデコレーションがお披露目されるので、暖を取りがてら見に行ってみよう。その東側を走るビブリオテークス通りにはおしゃれな店やナイトクラブが並び、さらに北上すれば国立スウェーデン図書館があるフムレ公園が現れる。教会の回廊のように円柱が立ち並ぶこの図書館も堂々たる建築だが、建築と本に興味があるならばストックホルム市立図書館を見ておかなくては。円柱型の建物の中は360度ぐるりと書架が張りめぐらされて、建築の国スウェーデンの真髄を見るような見事な空間に圧倒されるに違いない。


©Tuukka Ervasti/imagebank.sweden.se



そしてクングストレーゴーデンのマーケットから西に歩くとほどなく現れるのが、新市街の中心地セルゲル広場。ここは他の2か所に比べてぐっと近代的で、白黒モザイク模様の広場にガラス張りの小屋が立つモダンなクリスマス・マーケットが開催される。木造り小屋が連なる伝統的なマーケットもよいが、ガラス越しに暖かそうな店内の様子が見えるのもなかなか素敵だ。広場に立つ文化会館で伝統あるマリオネット劇を観たり、近くのヒョートリエット市場でクリスマスでなく普段使いのマーケットを体験するのも、ストックホルムらしさを感じられるだろう。



>©Tuukka Ervasti/imagebank.sweden.se
©Ulf Lundin/imagebank.sweden.se


コーヒーと甘いお菓子でフィーカのひととき

以上の3か所はどこも徒歩で回れる近さなので、町を散策しながら趣向の違ったクリスマス・マーケット巡りを楽しんでみたい。他に世界最古の屋外博物館であるスカンセンの週末クリスマス・マーケットとニューイヤーズ・イブのイベントにも注目だ。
ところでコーヒー文化が根付いた北欧だが、フィーカ(コーヒーブレイク)のお供にはどんなお菓子が登場するのだろう? 答えはシナモンブレッドをはじめカルダモン風味のお菓子やキャロットケーキなど。スウェーデンの人々が大好きな濃いめのブラックコーヒーと相性がよく、体の温まるスパイスの効いた飽きのこない甘味が定番だ。
他には12月13日の聖ルチア節でルッセカットというサフラン入りのロールパンを食べる習わしがあり、クリスマス・マーケットでもこの黄色いパンをよく見かけるはず。ルッセカットとは「ルチアの猫」という意味だと知れば、猫の尻尾のようなその姿がかわいく見えてしまう。そして家庭でよく作られるのがパンコーカ。クレープのように薄いパンケーキに生クリームとリンゴンベリーを挟んだ食べ物で、濃厚なミルク味の生クリームが忘れられない美味しさだ。かつてスウェーデンでは曜日ごとに決まった食事があり、パンコーカとえんどう豆のスープは木曜日の定番メニュー。軍隊でも木曜に供されるこの食事が皆の楽しみだったとか。
家に閉じこもりがちな北欧の冬。だけどクリスマス・マーケットとフィーカがあるかぎり、陽の射さない町も美しく輝き続ける。


Info
スウェーデン観光局オフィシャルサイト(英語)
visitsweden.com

 

Denver Colorado, United States