塩の鏡に天空を映す
Uyuni, Bolivia
ウユニ(ボリビア多民族国)(2014年4月18日記事)

Uyuni, Bolivia

はてしない雪原のようにも見えるし、空の真ん中にいるようにも見えるし、大掛かりな鏡張りのセットにも見える。ボリビア多民族国の西南側にあるウユニには、強烈なインパクトを持った世界最大の塩原が広がる。「そこへ行くと人生観が変わる」という謳い文句の場所は世界のあちこちにあるが、間違いなくここもそのひとつだろう。そうでなくても「天空の鏡」と呼ばれる絶景の中に身を置けば、味わったことのない感覚を体験できるに違いない。




塩湖に消え去る上下感覚

ウユニは小ぢんまりとした町だが、ボリビアらしい原色の家々やインディヘナの人々の暮らしを垣間見ることができる。何より起伏のないまっ平らな町並みに、ここがアンデス山脈の山と山に囲まれた平原=アルティプラーノなのだと実感するだろう。塩湖行きのツアーはウユニの街中から出発する。4WD車に1時間ばかり揺られると車窓に塩湖が姿を現し、そのまま車ごと水の中へ入り込んでいく。ここはアンデス山脈の山間3700メートルの標高にできた塩の大地。南米には他にも大小の塩湖があるが、ウユニ塩湖の広さは1万582平方メートルとずば抜けている(東京都の5倍近くの面積の塩が目の前に広がっていると想像してみてほしい)。この光景と出会うには雨季がベストシーズンだ。この季節には塩湖の表面に溜まっ た雨水が巨大な鏡と化して、地上のすべてをくっきりと映し出す役目を果たす。ただし天地が逆転したような摩訶不思議な感覚と光景を味わうには、恵みの雨、太陽の光、白い雲等が完璧なタイミングで揃ってくれるかどうかにかかっているので、そんな日に行けたなら運がいい。車から下りて音さえもない塩湖の真ん中に立ち、くっきりとシンメトリーを描く天地にはさまれて、上下がわからなくなる感覚に身を浸していると、頭の中の思念が消えてゆく。ふと足元を見れば、ピラミッド形の塩の結晶が水の中でキラキラと輝いている。これがそのまま大きくなったような三角錐がぽつぽつと塩湖の中に盛り上げられ、集荷されて近くの製塩所で食塩や飼料等になるそうだ。
試しに塩水をなめてみると、ものすごくしょっぱい。4月に入ると季節は雨季から乾季へ向かう。水がすっかりなくなった塩湖が塩原へと変化して、遠近感を失うほど真っ白な大地を臨めるのは乾季ならでは。雨季だと水量が増して行けないこともあるインカワシ島への観光も可能だ。一面の白をバックに巨大サボテンが群生する島の姿はなんともシュール。近くにある塩のホテルに滞在し、インテリアも家具も全て塩でできた宿から夜景や日の出を眺めるのも、ウユニらしい旅の思い出になるだろう。

鉄道の墓場にたたずむ



ツアーによってはウユニの町と塩湖の道中で、古い蒸気機関車の車体や部品が転がる場所に立ち寄る。かつて鉄道が通っていた区域だが、今ではその名も「列車の墓場」。19世紀末に線路が敷かれ近辺で採掘される鉱物を鉄道輸送していたが、1940年に鉱山閉鎖にともなって廃線となり、ここに車両が集められ放置された。鉄道博物館を作るという話は出ているものの計画は進まず、列車の墓場としてウユニ名所になったのは運命の皮肉というべきか。
赤錆がびっしりの車体やむき出しの鉄枠が地平線をバックに放り出された姿が印象的で、列車の中に入るのも上に乗るのも自由というおおらかさ。もしスチームパンクな演出の写真を撮りたいなら、この上ない場所だろう。鉄道の墓場も塩湖もこの世のものとは思えない景観で、さながらアンデスの懐に抱かれたSFの世界。とてつもなく非日常的な光景とのんびりひなびた日常を営むウユニの町、なんとも絶妙な共存だ。 


More Info
● ボリビア観光庁HP
www.bolivia.travel