入植と建国の足跡を見つめる カナダのへそ
Winnipeg
Manitoba(2015年12月18日記事)

Manitoba

Manitoba Legislative Building and Skyline in Winter   Credit: Dan Harper©Tourism Winnipeg
オンタリオ州の西に接するマニトバ州の州都、ウィニペグ。アメリカとの国境からそう遠くない、マニトバ州最大の都市は、カナダの東部と西部を結ぶという地理上の重要性を持つ。同時に、アメリカ側から流れ込むレッド川が市内を縦断し、西からのアッシニボイン川と合流してウィニペグ湖へとつながるため、南北の交通の拠点としても、ファーストネーションのころから交易地として栄えた歴史を持つ。
Hudson the polar bear at Assiniboine Park Zoo   Credit: Assiniboine Park Conservancy © Tourism Winnipeg

Pavilion Gallery and the Duck Pond at Assiniboine Park   Credit: Desiree Dyck © Tourism Winnipeg

これをふまえて歴史を紐解くと、ウィニペグの歩みで大きな部分を占めるのは、ハドソンズ・ベイ・カンパニーだ。1670年にロンドンで設立された、イギリスの毛皮交易会社・国策会社である同社は、当時ヨーロッパで流行していたビーバーの毛皮を求め、またカナダへの入植を進めるためにハドソン湾南岸のヨーク・ファクトリーを拠点として取引を始めた。ファーストネーションの人々がもともとハドソン湾近辺で交易を行なっていたため、それらの人々が持ち寄った毛皮と、ナイフや針などの生活必需品、ブランケットなどのウール製品と交換したのだ。ハドソンズ・ベイ・カンパニーのブランケットは、現在でも歴史ある高品質のブランケットとして有名で、トレードマークのカラフルなストライプを目にしたことがある人も多いのではないだろうか。

Red River Mutual Trail   Credit: The Forks North Portage Partnership © Tourism Winnipeg

レッド川流域は同社の私有地として、毛皮貿易のほか、メティとよばれるファーストネーションとヨーロッパ人両方を祖先とする人々のコミュニティの中心となった。そのレッドリバー植民地に貿易拠点として最初に形成された集落が、現在のウィニペグだ。ちなみにその後、ヨーロッパのビーバーの毛皮ブームが終焉に向かうと、毛皮交易よりも、ゴールドラッシュと移住により物品の販売が重要度を増した。同社は毛皮取引から小売業へとシフトし、現在ではカナダの大手デパートである「ハドソンズ・ベイ」やキッチン用品店「ホーム・アウトフィッターズ」などを運営するカナダ最大の小売業を展開する企業となった。とにかくこうした入植の歴史があり、ウィニペグの東はフランス系、西はイギリス系と住み分けされ、2つの文化が交じり合い、独特の街並みが広がるようになった。現在では、古い町並みの中に近代的な高層ビルが融合した、ほどよい都市となっている。ケベック以西で最も大きなフランス系のコミュニティがあるサン・ボニファス地区は、厳かで美しいサン・ボニファス大聖堂に代表されるように歴史的建造物が多い。また、レッド川をはじめとするたくさんの湖や川に囲まれた自然豊かな場所でもある。

雪降るウィニペグは祭りのシーズン

© Festival du Voyageur 2015, Dan Harper Photography

さて、寒いカナダの中でも特に寒くて有名なウィニペグなのだが、毎年2月という冬真っ只中にフレンチ・カナディアンのお祭りが開催される。その名もフェスティバル・ドゥ・ボヤージャーという、入植の歴史を振り返るお祭りだ。

© Festival du Voyageur 2015, Dan Harper Photography

市内に点在する会場には、有名彫刻家による、高さ6メートルにもなる巨大な雪の彫刻が飾られ、人々を圧倒する。ファーストネーションやメティの歴史を追憶するとともに、各会場ではさまざまなライブやイベントが開催される。伝統音楽や伝統舞踊も披露され、それらを楽しみながら、フレンチ・カナディアンの食事やワインに舌鼓を打つのだ。

© Festival du Voyageur 2015, Dan Harper Photography

© Festival du Voyageur 2015, Dan Harper Photography

© Festival du Voyageur 2015, Dan Harper Photography

もちろんフレンチ・カナディアンといえば、のプーティンにトゥルティエール(ミートパイ)、メープルシロップなどもしっかり用意されている。今年は2016年2月12日から21日の10日間の開催だ。

丸くてもこもこしている北の動物達

Journey to Churchill   Credit: CTC/William Au© Tourism Winnipeg

市の中心から西に向かうと、1904年にアッシニボイン川に沿って作られたアッシニボイン公園がある。広大な園内には動物園にレストラン、アートギャラリーなどがあり、子ども連れに人気がある。「クマのプーさん」として知られるウィニー・ザ・プーのモデルとなったクマのウィニーが、当時ウィニペグに住んでいたコルバーン中尉が飼っていたクマに因んだものだという縁から、公園内には「クマのプーさん」を扱ったプー・ギャラリーも。さまざまな絵本やおもちゃ、イラストに著者のサイン本など、子どももマニアも楽しめる展示が常設されている。

Polar Playground at Assiniboine Park Zoo   Credit: Assiniboine Park Conservancy© Tourism Winnipeg

公園と動物園は現在、200億円をかけて段階的に改装を進めており、改装された園内は広々としておしゃれ。そしておすすめしたいのが、このアッシニボイン公園動物園だ。冬の動物園など行く気にならないという人は多いと思う。動物たちは固まって寝ていたり、やる気なく人間を観察していたりするし、寒い外を歩き回るのはつらい。だが冬の動物園の魅力を1つ挙げるとしたら、それは寒冷地に生息する動物たちだ。ふさふさの毛でもこもこになった彼らはほんとうにかわいい。最近オープンした新施設であるジャーニー・トゥ・チャーチルでは、ホッキョクグマを代表とするチャーチル周辺に生息する動物が展示されている。ホッキョクグマの展示では、楽しげに泳ぐ彼らを水槽の下から見られるようになっており、ダイナミックな姿が楽しめる。シロフクロウもホッキョクギツネも、白い毛がふくふくしている。広い敷地で飼育頭数も多いので、ぜひ堪能してほしい。

©Martin Lussier

もちろん、屋内で楽しめるものもたくさんある。ウィニペグには30以上の美術館や博物館が並ぶのだ。中でも1912年創設のウィニペグ・アート・ギャラリーは、1万3千点を超える現代イヌイット・アートのコレクションを所蔵している。小手先の技術ではない力強さと、自然への畏怖と感謝が感じられるアートはどれも心癒されるような、それでいて己の在り方を問い直されるような力に満ちている。彫刻や絵画、工芸品などを含むこのコレクションをより多くの人に見てもらえるよう、同美術館は新しくイヌイット・アート・センターの設立を計画している。またマニトバ出身のアーティストの作品の展示などにも力を入れており、歴史の記憶とローカルの魅力を未来に橋渡しする美術館だ。

市内はウィニペグ・トランジットのバスが全域を網羅しており、便利。ゆっくり回っても十分に楽しめる。  

Info
●ウィニペグ観光局公式サイト
www.tourismwinnipeg.com

●フェスティバル・ドゥ・ボヤージャー公式サイト
festivalvoyageur.mb.ca

●アシニボイン公園公式サイト
www.assiniboinepark.ca

●ウィニペグ・アート・ギャラリー公式サイト
wag.ca




 
 

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